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川田 誠一 学長 式辞

川田誠一学長

 この度、修士の専門職学位を授与される83名の皆さん、誠におめでとうございます。ここに情報システム学修士42名、創造技術修士41名が新たに生まれました。島田理事長はじめ法人幹部、教職員ともども皆さんの学位授与を心からお祝い申し上げます。またこれまで皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆さまに心よりお祝い申し上げます。
 さて、平成18年開学以来今年度10月までに合計1,410名の学生募集を実施し、1,501名の学生が本学に入学しました。この度の学位授与により、累計しますと平成18年に開設した情報アーキテクチャ専攻では情報システム学修士639名、平成20年に開設した創造技術専攻では創造技術修士522名、合計1,161名の修士を総数として本学は送りだすこととなりました。長期履修生として長く学んでいる方や、業務多忙、転勤、出産、子育てや介護などで学業を中断せざるを得ない方がいるなかでの数字です。
 そして素晴らしい学業成績をもって修了要件を満たしながらこの日を迎えることができなかった皆様の学友にも本日は特別学位を授与いたしました。ここに故人のご冥福をお祈りいたします。
 また、この度の新型コロナウイルス感染症の収束状況と本学学生の年齢構成などを総合的に考え学位授与式は遠隔開催としました。ご理解頂ければと思います。

 さて、本学のように高度情報人材育成とデザインと工学を融合した高度ものづくり人材育成を総合的に実施している専門職大学院は日本でも本学だけであり、このユニークな教育の実践について、文部科学省を始めとして政府機関からも本学に大きな期待が寄せられるようになってきました。
 特に、コロナ禍の中で遠隔教育を余儀なくされた日本の大学教育について文部科学省は次のような見解を述べています。「新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、これまで対面が当たり前だった 大学・高等専門学校の教育において遠隔授業の実施が余儀なくされ、実施に当たり課題も見られましたが、教員・学生からは「繰り返し学修できる」、「質問がしやすい」など好意的な意見もありました。デジタル活用に対する教育現場の意識が高まっているこの機を捉え、教育環境にデジタルを大胆に取り入れることで質の高い成績管理の仕組みや教育手法の開発を加速し、大学・短期大学・高等専門学校におけるDXを迅速かつ強力に推進することにより、ポストコロナ時代の学びにおいて、質の向上の普及・定着を早急に図る必要があります。」このようにこの一年の高等教育機関の教育手法を総括しています。
 そしてこのような現状認識から、文科省が前倒しで公募していた「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」の公募について、先日第3次補正予算が成立し、多数の応募大学があるなか、本学の申請が採択されました。本学の申請した取組は『技能教育高度化のための共創的技能学習プラットフォームの構築』でして、予算規模が最も大きい「学びの質の向上」に採択されました。専門職大学院の運営に特化した小規模な大学院大学である本学にとってこの大規模な予算の獲得は快挙であります。研究科長をはじめとして関係教職員の迅速な対応が功を奏しました。詳細は本学ホームページなどに掲載しておりますので省略しますが、本取組が実現しますと、授業コンテンツの効果的なデジタル化の手法と教示法を確立し、さらに学習者と指導者の経験価値を共有化し、さらに他機関と相互参照が行えるプラットフォームが構築されます。学生の皆さんと試行錯誤しながら実施してきた遠隔教育を基礎にさらに本学の教育のデジタル化を加速させ、本学の教育システムを先進的なものに変えていきます。

 コロナ禍の中で大学も新たな教育手法にシフトしてきましたが産業界もテレワークの重要性を再認識した1年でした。しかしこの1年を通じて世界を取り巻く状況も大きく変わってまいりました。それは脱炭素社会を目指した世界の動きであり、第四次産業革命の深まりです。情報産業、自動車産業、エネルギー産業を初めてとして解決すべき課題が山積しており、その問題を解決するための知識やスキルを持った人材が求められる時代がすぐそこに来ています。まさに本学の社会的使命である社会人を対象としたリカレント教育の重要性が再認識されてきました。
 第四次産業革命の中、一部の職種で雇用が大幅に減少し、一方で働き方改革とテクノロジーの進歩で1億3,300万もの新しい職が生まれるとの予測もあり、昨年のダボス会議においては、このような職種の転換のための再教育について「2030年までに10億人のリスキルをめざすリスキリング革命」が提唱されました。
 本日学位を取得された皆さんもまた新たな学びを求めるときが来ると思います。そのときに皆さんの期待に応えることができるように本学も変わり続ける必要があるものと考えています。変わり続けることができる高等教育機関こそ研究者と実務家が連携した専門職大学院に求められていることだと考えています。

川田誠一学長

 さて、本日学位を取得された皆さんの多くは遠隔でプロジェクトを実施されました。そして、2月11日に遠隔開催されたAIITPBLプロジェクト成果発表会において、その学びの集大成を披露されました。その成果は多様です。プロジェクトマネジメントやソフトウェア工学に基礎を置くアジャイル開発などのテーマに始まり、発想支援やプロデュース、そして高齢者支援の様々な社会実装をテーマとしたもの、そして、コロナ禍の中での働き方を支援するシステム開発やメンタルケアなど、さらには地域開発からアジア・アフリカを視野に入れたSDGsの政策提言まで対面の活動が制限された中、皆さんは素晴らしい成果を達成されました。そして、高いコンピテンシーを獲得され、幅広い人脈と素晴らしい思い出も手に入れました。
 このような学びの成果を通じて、皆さんは、今後のキャリアアップ、キャリアチェンジ、スタートアップにおいて大きな力を得ました。どうか皆様、本学で学んだ知見を活かし、幸せな輝かしい人生を歩んでください。本日は誠におめでとうございます。

令和3年3月20日
東京都立産業技術大学院大学
学長 川田誠一

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