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島田 晴雄 理事長 挨拶

島田晴雄理事長

 東京都公立大学法人理事長として、法人を代表して一言祝辞を申し上げます。皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。2年間の真剣な努力と研鑽を続け、本日春の卒業を迎えになられたことと存じます。今日は、御来賓の皆様、御関係者の皆様画面でご覧になられているかと思いますが、様々なご支援ご協力に心から感謝いたします。またご家族の皆様も画面でご覧になられていると思いますけれども、よく学生の皆様の学業を支えて、今日まで来られたこと、心からお祝い申し上げます。

 東京都立産業技術大学院大学は、いくつかの優れた特徴をもっていると思いますが、1つは、高度な学び直しの大学院であるということです。全国の専門職大学院では、突出した業績と評価されています。産業界のみならず、文部科学省、経済産業省からも大変注目をされて、特にPBL(Project Based Learning)に基づく教育法は、高い評価を受けていることを承知しております。また、本学は世界からも注目されており、AIITという名称で呼ばれておりますが、産業発展に貢献する人材教育ネットワークの拠点だと評価をいただいております。
 また、APEN(Asia Professional Education Network)はPBL型教育の発展・普及のために2011年6月に創設された運動ですが、その運動を現在の川田誠一学長が、会長となり非常に優れたリーダーシップをもって推進しておられ、関係者から高く評価されております。川田学長も常に仰っておられますが、今日ますます技術革新のペースが早まっており、環境もどんどん変わっているそのような中で、リカレント教育の重要性がますます高まっております。

 このグローバルな激しく変化する環境の中で、切磋琢磨することが求められております。一方で、人生100年時代と言われているわけで、現在50歳未満の方々は人口学的に計算すると、その方々の生涯平均は100歳なのです。現在50歳未満の半分以上は100歳以上ご活躍されるということがわかっているわけです。そのような時代では、20歳代までの教育では、今後に明らかに限界があるわけです。ですので、30歳代、40歳代、50歳代、60歳代、さらにその先でも知識を学び経験するということが求められていると思いますが、東京都立産業技術大学院大学はまさにそうした要請に応えるリカレント教育を実践されており、素晴らしいと思います。産技大のモットーはキャリアアップ、キャリアチェンジ、そしてスタートアップの3つです。特に近年では、シニアスタートアッププログラムが2018年度から開始され、概ね50歳以上の方々を対象とし、非常に経験豊富な人材が集まり、社会的にも非常に強い関心を呼んでいるという大変大きな成果が挙がっております。そうした産技大ですが、昨年の1月からの新型コロナウイルスが急激に流行って、ソーシャル・ディスタンスを取らなければならないということで、授業あるいはプロジェクト活動を対面で行うことが極めて困難になったということですが、その下で、オンライン授業、リモート会議をフルに活用してこられました。
 このオンライン授業やリモート会議というのは20年以上前からやろうという声があったわけですが、日本の教育では来なかったわけです。今回のような未曽有の経験に産技大は率先して挑戦されて、全国の大学に比べるとその面では、一日之長をもっておられることと思います。また学生さんも社会人としての経験が豊富なので、リモート会議等の経験を普通の大学よりはるかに豊かに持っておられるということもあって、全学一致してこの困難を克服してこられ、誠に見事だと思います。またAPENについても海外出張は不可能な状況ということもあり、オンラインセミナーを実施し、6か国、11名の方が参加されて、大変良い成果を挙げたということであります。

島田晴雄理事長

 本学には、大変優れた教授陣がおられますが、同時に産業界の方々の協力は非常に大きいと思います。特に本学は、産業界の第一線、最高位の方々が沢山顧問をなさっておられ、そして職員、学生の皆様の努力がチームワークとして一体となって近年ますます高い成果を挙げています。これは、私も拝見していて大変誇りに思うところです。この新型コロナウイルスの流行は、100年に一度あるかないかの歴史的、あるいは地球規模的な大事件です。約100年前にスペイン風邪というインフルエンザのもとになるものがあり、3年間繰り返し地球を襲いましたが、亡くなった方は総勢4000万人と言われております。今の新型コロナウイルスも、増えたり、減ったりしておりますけれども、感染のペースが世界的にやや緩くなってきたかなと思いますがまだまだ予断を許さず、変異ウイルスと呼ばれるものもあります。コロナウイルスはもともと遺伝子の帯が1本しかなく、ちょっとしたショックや事故があると、崩れて別物になるため、それをワクチンで抑えるのは非常に難しいチャレンジです。そういった中で、先ほど申し上げたオンライン授業、リモート会議が非常に進んだのは、関係者の皆様の努力の賜物と思います。

 同時にコロナ禍で、社会経済が大激変を経験し、今後もさらに進むことと思います。例えば、新型コロナウイルスは会話、呼吸をするとどんどん感染していくため、対面型の飲食サービスがどんどん衰退していくことは、大変残念ながら避けられないことと思います。それから、大都市集中型で大規模なオフィスを構えるということの意味が、段々と問い直され、都市の在り方というのは変わってくるだろうと思います。さらに移動型の観光、交通、特に国際航空については、この1年ではお客様の9割以上もいなくなるわけですから、産業としては成り立たなくなるわけです。しかし、航空産業というのは国家の中核の戦略産業の為、今のようなままではいかないと思いますが、大変なことです。そして、労働集約産業というのがどんどん難しくなってくるというのがあります。しかし、他方で非対面のビジネス、非対面のサービス、リモートワークというようなことは、どんどん増えているわけです。人々が巣ごもりをし、会社に行かない、家族皆が家にいると忙しいということで、宅配が非常に流行ってきています。(コロナ禍前までは)このように家族が揃って家にいるということがなく、(リモートワークで)家族皆が揃うとお父さんの机がない、ソファがないというようなことで家具の需要がものすごく増え、爆発的な利益を上げています。そして、この不況の中でなぜか住宅産業がものすごく増えており、これも成長産業です。そしてもっと大きいのは、非対面活動を支えるインフラはもちろん、情報産業です。通信、画像、AI、ロボット、ドローン。この産業はもっともっと進むだろうと思われます。労働集約的な農業や、交通や、運輸、産業廃棄等は、産業構造がガラッと変わるというような時代に皆様、卒業なさっていくわけです。大変な時代ですが、ある意味ではものすごくやりがいのある時代という可能性がありますね。そのような変化をよく見据えて、先取りをなさって、新たな未来を創造することで大活躍していただきたいということを心から期待しております。そのような思いを込めて、改めて、この産技大のご卒業、心からお祝い申し上げます。

2021年3月20日
東京都公立大学法人理事長 島田晴雄

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