川田 誠一 学長 式辞
この度、修士の専門職学位を授与される90名の皆さん、誠におめでとうございます。ここに事業設計工学修士16名、情報システム学修士37名、創造技術修士37名が新たに生まれました。
山本理事長はじめ法人幹部、教職員ともども皆さんの学位授与を心からお祝い申し上げます。またこれまで皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆さまに心よりお祝い申し上げます。
さて、平成18年開学以来今年度10月までに合計1,510名の学生募集を実施し、1,619名の学生が本学に入学しました。この度の学位授与により、事業設計工学修士16名を、平成18年に開設した情報アーキテクチャ専攻及びその後継である情報アーキテクチャコースでは累計しますと情報システム学修士682名を、平成20年に開設した創造技術専攻及びその後継である創造技術コースでは累計しますと創造技術修士566名を、以上合計1,264名の修士を開学以来本学は送りだすこととなりました。
長期履修生として長く学んでいる方や、業務多忙、転勤、出産、子育てや介護などで学業を中断せざるを得ない方がいるなかでの数字です。
さて、本学のように高度情報人材育成とデザインと工学を融合した高度ものづくり人材育成を総合的に実施している専門職大学院は日本でも本学だけであり、このユニークな教育の実践について、文部科学省を始めとして政府機関からも本学に大きな期待が寄せられるようになってきました。
特に、コロナ禍の中で遠隔教育を余儀なくされた日本の大学教育について文部科学省は次のような見解を述べています。
すなわち「新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、これまで対面が当たり前だった 大学・高等専門学校の教育において遠隔授業の実施が余儀なくされ、実施に当たり課題も見られましたが、教員・学生からは「繰り返し学修できる」、「質問がしやすい」など好意的な意見もありました。デジタル活用に対する教育現場の意識が高まっているこの機を捉え、教育環境にデジタルを大胆に取り入れることで質の高い成績管理の仕組みや教育手法の開発を加速し、大学・短期大学・高等専門学校におけるDXを迅速かつ強力に推進することにより、ポストコロナ時代の学びにおいて、質の向上の普及・定着を早急に図る必要があります。」
このようにコロナ禍の中の高等教育機関の遠隔教育手法を総括しています。そしてこのような現状認識から、文科省が前倒しで公募していた「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」の公募について、昨年1月に第3次補正予算が成立し、多数の応募大学があるなか、本学の申請が採択されました。
本学の申請した取組は『技能教育高度化のための共創的技能学習プラットフォームの構築』でして、予算規模が最も大きい「学びの質の向上」に採択されことは皆様もご存知のことと思います。
専門職大学院の運営に特化した小規模な大学院大学である本学にとってこの大規模な予算の獲得は快挙であります。研究科長をはじめとして関係教職員の迅速な対応が功を奏しました。
さて、この間世界を取り巻く状況も大きく変わってまいりました。それは脱炭素社会を目指した世界の動きであり、第四次産業革命の深まりです。情報産業、自動車産業、エネルギー産業を初めてとして解決すべき課題が山積しています。
また、ロシアによるウクライナ侵攻から、我々は世界の安全保障の脆弱性を目の当たりにすることになりました。多くの社会課題を解決するにはそれにふさわしい知識やスキルを持った人材が求められます。まさに本学の社会的使命である社会人を対象としたリカレント教育の重要性を再認識するところであります。
本学位を取得された皆さんもまた新たな学びを求めるときが来ると思います。そのときに皆さんの期待に応えることができるように本学も変わり続ける必要があるものと考えています。変わり続けることができる高等教育機関こそ研究者と実務家が連携した専門職大学院に求められていることだと考えています。
さて、本日学位を取得された皆さんの多くは遠隔でプロジェクトを実施されました。そして、2月11日に遠隔開催されたAIITPBLプロジェクト成果発表会において、その学びの集大成を披露されました。
その成果は多様です。起業創業を目指したプロジェクト、檜原村を対象とした地域課題解決など様々な成果が得られました。SDGsをはじめとしたグローバルな社会課題の解決を目指した重要なプロジェクトもございました。新たなモビリティや交通システムによる課題解決に関するプロジェクトも斬新でした。コロナ禍の中孤独の中に置かれた人たちに寄り添ったプロジェクトも時宜にかなったものでした。
コロナ禍の中での働き方を支援するシステム開発やチームの作り方についてのプロジェクトも高い成果を得ました。プロジェクトマネジメントやソフトウェア工学に基礎を置くアジャイル開発や情報セキュリティに関するテーマにチャレンジしたプロジェクトも高度なIT人材の育成に貢献しています。準天頂衛星を活用する国際的なプロジェクト、認知科学などの知見に基づく新たなサービスシステムの開発のプロジェクトなども高い成果を得ていました。
コロナ禍の中その活動が制限される中皆さんは素晴らしい成果を達成されました。このような学びの成果を通じて、皆さんは、今後のキャリアアップ、キャリアチェンジ、スタートアップにおいて大きな力を得たことと思います。
式辞を終える前に、開学以来、私がホームページで発信してきたメッセージをあらためて皆さんにお伝えします。マハトマガンジーの有名な言葉です。
明日死ぬつもりで生きよ、永遠に生きるつもりで学べ
どうか皆様、本学で学んだ知見を活かし、幸せな輝かしい人生を歩んでください。
本日は誠におめでとうございます。
令和4年3月19日
東京都立産業技術大学院大学
学長 川田誠一