令和3年度秋季入学式を実施しました
令和3年10月1日、東京都立産業技術大学院大学秋季入学式を実施しました。この日、事業設計工学コース3名、情報アーキテクチャコース8名、創造技術コース2名が入学しました。新入生に向けた学長の式辞を紹介します。また今年度の秋季入学式は新型コロナウイルス感染防止対策として、対面遠隔併用で開催いたしました。
川田誠一学長 式辞
本日、東京都立産業技術大学大学院に入学した13名の皆さん入学おめでとうございます。山本理事長はじめ法人幹部、教職員ともども皆さんの入学を心からお祝い申し上げます。またこれまで皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆さまに心よりお祝い申し上げます。
本学は平成18年開学以来、本日をもって学生募集総数1,510名、入学者総数1,619名となりました。そして、本日より、産業技術研究科産業技術専攻13名、うちわけとしまして、事業設計工学コース3名、情報アーキテクチャコース8名、創造技術コース2名の皆さんが本学の学生として新しい学びを開始されます。
産業技術分野の専門職大学院として着実に社会に認知されてきました。
さて、入学者の皆さんは新型コロナウイルスの感染の広がりの中、入学されました。この時代に生きる者にとって経験したことのない状況に皆さんも我々も直面しています。これを取り巻く問題はこの新型コロナウイルスの影響が社会の広範囲におよび、かつ抜本的な対策がいまだみつからないことにあります。
このような中、本学では令和2年度当初は遠隔授業を中心に授業を実施し、後半では対面と遠隔の併用で授業を実施してきました。開学以来本学では原則すべての講義をビデオで配信する仕組みを導入しています。また、秋葉原キャンパスを対象にした実時間双方向の授業も実施してきました。このようなことから今回のコロナ禍の中、授業の実時間双方向遠隔実施とオンデマンド配信を併用した授業を順調に実施してきました。
また、この度の新型コロナウイルス感染症の収束状況と本学学生の年齢構成などを総合的に考え入学式は対面・遠隔併用開催としました。
さて、本学のように産業技術分野で三コースを設置し総合的な専門職学位課程を有する大学院は日本でも本学だけであり、このユニークな教育の実践について、文部科学省を始めとして政府機関からも本学に大きな期待が寄せられ過去3度、北は北海道大学から南は琉球大学まで国立大学の職員100名以上が毎年本学でリカレント教育に関する研修を受けてきました。
この専門職大学院の制度上の特徴は、『理論と実務を架橋した教育を行うことを基本としつつ、少人数教育、双方向的・多方向的な授業、事例研究、現地調査などの実践的な教育方法をとること、研究指導や論文審査は必須としないこと、実務家教員を一定割合置くこと』などです。本学はこのような基準に基づいて教育システムを開発するなかで諸外国の調査を踏まえて、開学当初からプロジェクトを中心に据えた教育プログラムを実施し、それを継続的に改善発展させてきました。その成果はAIIT‐PBLメソッドとして取りまとめ、内外に発信しています。
皆さんは入学前に本学のホームページをご覧になったと思います。そこで私が発信しているメッセージに次のような箇所があります。
「実社会で直面する技術課題は演習問題ではありません。一つの専門知識やスキルで解決できない課題がほとんどです。従来の大学院教育で実施されてきた体系的な知を獲得しているだけで解決できるほど現実の問題は単純ではありません。むしろ従来の知識だけでは、その本質を理解することすら困難な複雑性を有しています。それぞれが技術横断的な問題解決を必要とするのです。本学では、このような現実の問題を高いレベルで解決できる人材を育成するために豊富な事例を用いた授業や本格的なPBL型教育を導入することで、実践的な業務遂行能力を獲得できるようにしました。PBL型教育の原点は自らの力で原理原則に立ち戻り考えることと、高いコミュニケーション力を発揮してチームで強固な壁を突破することにあります。これらの力を本学では全学生が獲得すべきコンピテンシーとしています。すなわち、コミュニケーション能力、チーム活動、継続的学習と研究の能力の3つのメタコンピテンシーの獲得を皆さんに求めています。」
ここで語りたかったことのひとつは、予め学んだ体系的知識だけでは課題解決が困難な現実の問題が沢山あるということです。完成された知識などない、継続的に学習し研究する力が必要であるということです。
皆さんに是非お読みいただきたい本がございます。それはJ.S.ミルがイギリスのセントアンドルーズ大学の名誉学長に就任したときの講演録です。日本語訳では岩波文庫から「大学教育について(J.S.ミル (著), 竹内 一誠 (翻訳))」として出版されています。ミルはこの演説で『大学は職業教育の場ではありません。大学は、生計を得るためのある特定の手段に人々を適用させるのに必要な知識を教えることを目的とはしていないのです。』ときっぱり話しています。これから専門職大学院で学ぶ皆様に大学の目的が職業教育ではないということが書かれた本を推薦するとはどういうことかとおしかりを受けそうです。ミルは続けます、『人間は、弁護士、医師、商人、製造業者である以前に、何よりも人間なのです。』と、そして彼の講演はあらゆる高度な職業に携わる者が身に着けるべき本質的な教養の重要性を語ります。
専門職大学院とは実践的な教育をする大学院だと一般には理解されています。それは間違ってはいません。しかし真に実践的であるためには知の体系を未来に向かって拡大していく能力が不可欠です。コンピテンシーのひとつである継続的学習と研究の能力の獲得を皆さんに求めているのも、こういった理由からです。
本学では様々な国籍、世代の方々、そして職種、職層も様々、大学を卒業したばかりの方、企業の現場で活躍しているエンジニア、管理職、経営者などが学生として学んできました。本学学生や修了生には社長も少なくありません。社長会も設置しました。外国人学生も留学生だけではなく、企業で活躍している外国人の方々も毎年入学しています。このような多様な学生達が同じ立場でチーム活動する学習環境は本学ならではのものです。今日皆さんは22歳から72歳までの同級生、友人を得ました。わくわくする学びの環境が整いました。
新入生の皆さん、どうぞ本学で学び、キャリアアップ、キャリアチェンジ、スタートアップする力を獲得してください。
本日は、誠におめでとうございます。
令和3年10月1日
東京都立産業技術大学院大学
学長 川田誠一