令和4年度秋季学位授与式を実施しました
令和4年9月17日(土)、東京都立産業技術大学院大学秋季学位授与式を実施しました。この日、事業設計工学コース1名、情報アーキテクチャコース4名、創造技術コース5名が修了しました。修了生に向けた学長の式辞を紹介します。また今年度の秋季学位授与式は新型コロナウイルス感染防止対策として、対面遠隔併用開催となりました。
橋本洋志学長 式辞
東京都立産業技術大学院大学を修了される皆さん、修了、誠におめでとうございます。山本理事長はじめ東京都公立大学法人の幹部職員、本学の教職員ともども皆さんの学位授与を心からお祝い申し上げます。
また、皆さんをこれまで支えてこられた、ご家族や関係者の皆さまに、心からお祝い申し上げます。コロナ禍のこの状況、および本学学生の年齢構成などを総合的に考え、学位授与式は対面遠隔併用開催としましたこと、ご理解ください。
皆さんは、修士の専門職学位を授与されました。改めて専門職学位について説明いたします。文部科学省が定めるところの専門職大学院とは、科学技術の進展や社会・経済のグローバル化に伴う、社会的・国際的に活躍できる高度専門職業人、すなわち、プロフェッショナルの養成に目的を特化した課程のことを言います。この主旨に沿って、本学は、専門的知識と体系化された技術ノウハウを活用して、新たな価値を創造し、産業の活性化に資する意欲と能力を持つ高度専門職業人の育成を目的としています。そのため、本学は、他の大学院より教育の質と量が豊富な教育課程を課しています。みなさんは、大変苦労をされて、この課程を修了し、その証として学位が授与されます。
本学での学びは、能力の養成を最重要視していますので、結果が求められる修士論文審査を設けていません。求められる能力は、専門的な技術力の発揮に加えて、異文化理解、他者とのコミュニケーション、たゆまない学習が行えること、など多岐に渡ります。そのため、本学は PBL型科目を通して、チームとしてのグループワークを教育プログラムの中に入れています。みなさんは、メンバー間での非常に刺激的な啓発と刺激をお互いに与えながら、幾つもの能力を、磨き上げられたことでしょう。優れた才能を持つメンバーというのは、才能や考える方向が異なることがあるため、時として摩擦が生じたことと、推察しています。しかし、そのような摩擦を乗り越えてこそ、真の能力が身に付く、ということを気付かれたことでしょう。その気付きこそが、みなさんのこれから活躍される糧になると、私は信じています。
さて、先の説明で、科学技術の進展と社会・経済のグローバル化という言葉がありました。この言葉のとおり、現在では、これらが更に進み、個人のみならず社会の価値観の多様性が広がっています。これに対応するため、時間、空間の制約をなくした社会活動の取り組み、例えば、メタバースのような取り組みが始まっています。このようなものに、どのような価値が産み出されるのか、真の姿はまだ見えていませんが、人々がそこに価値を見出すならば、新たな社会デザインが生じるでしょう。歴史を振り返るならば、社会が進む方向とは、人々を魅了する価値に影響されてきました。例えば、ルネサンス時代の美術品は物資的な価値、産業革命時代の印刷技術は知識に対する価値であり、現代ではサービスという形の無いものにも価値が与えられ、多くの技術や製品が産み出されています。このように、その時代、その時代において、人を魅了し、それが原動力となって、社会が動いてきました。すなわち、人間は、人類の有史以来、価値を追い求めるという、この不変的な原則は、これからも続くでしょう。
現代において、価値は個人だけが所有しても、真の幸福にたどり着くには不十分であるということが広く認識されています。現代の価値は、環境との共生(これは、共に生きるという意味です)、そして、国境を超えた共存に、人類のみならず地球上の生物の持続可能性に繋がるということが知られています。しかし、人間は時として、ある価値観に取りつかれると、あらぬ方向に動き出し、周りとの共存を難しくすることがあります。これは歴史が証明しています。それだけに、今後、世界的にクローズアップされる、エネルギーと食料の配分問題は、単に資源の取り合いだけでなく、それを消費する個人と社会の行動様式の見直し、すなわち、新社会様式のデザインを提案し、人々の関心をそれに振り向けるような活動が必要となるでしょう。
人は、生きることに必死になると、時として、個人の従来の価値を優先し、他者と共有できる価値を見失いがちです。そうなると、時として、社会で活動することが息苦しくなるものです。そのようなとき、本学で学んだことをぜひ思い出してください。本学のPBLにおいて、メンバー間で議論や考え方の衝突があったときのことを思い出してください。そのとき、相手の考え方や価値観はどこにあったのか、自分はどうだったのか。それぞれの立場に立って、改めて思い出してみてください。そうすることで、多様な価値の意味を改めて考え直す「きっかけ」が得られ、いったん、立ち止まって、周りを見回す余裕がきっと出てくることでしょう。そうなれば、しめたものです。本学の学位を有するみなさんは、きっと、より良い道と新しい価値を見出すことでしょう。
最後に、産技大は、社会の変容とニーズに適応できるよう、日々、教育と研究の在り方を探求しています。これからの産業技術の社会においては、みなさんのような専門職学位を有する人材が、東京都のみならず、世界の持続的発展を支える原動力になると考えています。そのため、産技大は、DX型教育や産業技術分野のリスキル学習等の最先端教育を実施し、さらに、多くの外部機関と連携しての協同活動をさらに推進する予定です。そして、在学生や修了生にとっても、また我々教職員にとっても、人々の幸せと、社会の持続的な発展に貢献する、誇りある大学院であるようにいたします。
産技大の一員であるという誇りを胸に、皆さんが大いに活躍することを心から祈念して、私からの祝辞といたします。
令和4年9月17日
東京都立産業技術大学院大学
学長 橋本洋志