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第9回インタビュー
AIITで学ぶデザインとは?
―PBLを始める前に学修すること―

今回のインタビュー

國澤好衛教授

國澤好衛教授
千葉大学にてプロダクト・デザインを学んだ後、1977年に㈱東芝に入社。家電機器のデザイン、新規事業のグランドデザイン、システム開発のコンサルティング、市場・顧客開拓のためのB to Bマーケティングなどに従事。2006年、首都大学東京インダストリアルアートコースの立ち上げに参画。同教授を経て、08年より現職。

先生のご経歴を拝見しても、デザインの対象が時代とともに変化していると感じます。

國澤 一般にデザインというと、最終製品の形を決める、B to Cのデザインがイメージされますが、B to Bのデザインというものがあります。たとえば鉄道駅のシステムを考えてみましょう。求められる機能は、安全で、快適で、使いやすいといったことです。エンジニア的なアプローチからは、合理的で、効率的、かつ低コストといったことが重視されますが、デザイナーの関心は、快適さ、文化度、精神の充足などに向きます。そうしたアプローチが融合するところに、駅の新システムがつくられるわけです。今、製品のデザイン拠点は、製造拠点である新興国に移りつつあります。では、わが国のデザインの対象は何か。日本の得意分野を生かすには、B to Bのデザイン、社会システムのデザインへと軸足が移っていくと考えられます。

AIITで学ぶデザインとは、どのようなものでしょうか。

國澤 国内企業がB to Bのデザインを指向することで、デザイナーの立ち位置が変化しています。ことにシステム開発のプロジェクトでは、開発・生産部門とユーザーを代弁する営業部門との間に立ってプロジェクトを進行するファシリテータの役割を求められることになります。たとえてみれば、会議の板書係とでも言えばいいでしょうか。各部門のアイデアや考え方を理解しつつ、システムの最終形をつくりあげるためのプロジェクト・マネジャーとしての役割を担うデザイナーに必要なスキルを、AIITで修得します。目指しているのは、デザインに軸足を置きつつ、企業で活躍できる人材の輩出です。

具体的にはどのようなものを学ぶのでしょうか。

國澤 重要なのはコミュニケーション技法です。言語によるコミュニケーションはもちろんのこと、図やイラストといったものによる非言語コミュニケーションの訓練も行います。一瞬で全体像を伝えられる点で非言語コミュニケーションにはアドバンテージがありますが、では、どうやって伝えたらいいのか。非言語コミュニケーションの原則を理解し、型や素材、質感の選び方を学びます。また、デザインの価値は機能価値と感性価値の和だと考えられますが、特に感性価値をどう設計するか、非言語操作の方法を知ることが必要です。そこで、フィールドリサーチを実際に行ない、統計手法などを用いて感性価値を客観化する方法も学びます。

次回は、PBLの実際について伺います。

デザインの視点の変遷

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