第2回インタビュー
家庭の日常を守る新サービスを構築
―高いレベルの学生が参画するプロジェクトの全貌とは?―
今回のインタビュー
川田誠一教授
1982年、大阪大学大学院機械工学専攻博士課程を単位取得退学し、大阪大学工学部助手に。翌年、工学博士(大阪大学)。86年、東京都立大学(現:首都大学東京)工学部助手に転じ、助教授、教授を歴任。2006年、産業技術大学院大学産業技術研究科長に就任。
写真:川田PBLにおける指導の様子(川田教授は左から二人目)
2011年度の川田研究室のプロジェクトのテーマは?
川田 BCPを家庭に応用したHome Continuity Plan(HCP)サービスを提案し、SysMLを用いてモデル化するプロジェクトです。東日本大震災を経験したこともあり、家庭生活を持続するために必要なサービス設計の枠組みを構築しようと考えたわけです。
参加しているのはどんな学生ですか。
川田 メンバーは、女性3名、男性2名、20代から60代までで、その背景は実に多様です。HCPに不可欠なものについてディスカッションすると、「アロマなどの香り」を挙げる学生もいれば、「カンパン」という意見もあり、「化粧道具が欠かせない」という人も出てくる。ダイバーシティの見本のような状態のなかで、高いレベルの議論が繰り返され、毎回とても新鮮ですね。そのなかで斬新なアイディアも生まれますし、方法論の対立もうまく収束させています。
進行スケジュールは?
川田 第1クォーター(1Q)でHCPの発想の定義付けを行い、技術ロードマップを描いたり、動向調査やアイディア出しなどを行いました。2QでHCPビジネスのモデリングを、3~4Qで動的シミュレーションを行います。ひとくちに家庭といっても、態様はさまざまです。個人単位の顧客ペルソナを設定し、それに応じたサービス設計が可能になるよう、離散事象システムシミュレータを組み合わせるなどしています。
プロジェクトにはOBも関わるとか…。
川田 成績優秀な修了生は、認定登録講師として修了後もAIITの学びに参加します。同窓会などの行事やSNSによる交流も活発です。AIITを訪ね、後進の指導や相談に当たるOBも少なくありません。2年の学修では物足りないと感じる学生もいて、情報アークテクチャ専攻修了後、創造技術専攻に学びの場を移すケースもあります。学修は生涯続くものですから、AIITがその一端を担うことには大きな意義を感じます。
毎年、PBLの成果発表会が開かれます。
川田 HCPは、当初は無料サービスを提供して利用者の期待値を醸成し、その後、有償サービスを提供するスキームです。こうした前例のないサービスが、プロジェクトから次々に生まれます。特許を申請する考え方もありますが、社会福祉向上のためにも学会などで積極的に発表して、アイディアを早く社会に示すことが大切だと考えています。