将来の起業をPBLでシミュレーション
事業設計工学コース
阿部 嘉積さん
2022年修了
アベールクラウドテクノロジー株式会社 取締役
日本獣医生命科学大学・多摩大学大学院(経営情報学) 出身
科目等履修生として6年学び、本科へ
かつて社会人・IT技術者向けの無料セミナーに通い物足りなさを感じていた時に、社会人が学びやすい大学院として知ったのがAIITでした。52歳の時に科目等履修生になり、情報アーキテクチャコースで学び始めました。選択履修したのは、実務に直結するプロジェクトマネジメントに関する科目でした。
それから科目等履修生として6年通学しました。その後、前職を58歳で退職したのを機に、事業設計工学コースの修士課程で学び始めます。還暦後の起業を想定した本科入学でした。
単位バンク制度により、科目等履修生として修めた単位のうち5年分は本科の修了単位に算入できます。履修科目を詰め込まずに済んだので、起業までのロードマッピングに関する科目や、イノベーションに必要な基本的技術やITソリューションを中心に学び、学ぶペースは科目等履修生の時のまま維持しました。
PBLでの出会いに刺激を受ける
本科で学んで良かったことの第一は、やはりPBLの経験。創業に至る理論を実践して新事業を設計し、金融機関に融資の可否の評価を受けました。一連の経験は、理論を学び論文にして修了する通常の修士課程にはなく、将来の起業をシミュレーションできました。課題を抱えた現地での出会いからも、たくさんの刺激を受けました。
参加したPBLには、地域の課題を解決するサブプロジェクトが用意されていて、私はみかんの産地として知られる静岡県三ヶ日町を対象にしました。三ヶ日町では実ったみかんの9割が廃棄されており、フードロスを削減するためのマーケティング戦略を立案することが課題です。販路の拡大を目指すのは、廃棄されるみかんを原料にした新商品で、これを考案した現地の方の発想と導入した技術に驚かされます。斬新なアイデアはにわかに湧いてくるのではなく、身のまわりの課題を絶えず考え続けた人にもたらされることを実感。その刺激的な巡り会いは、PBLに参加していなければなかったことは言うまでもありません。
在籍最長記録を目指し再入学を目指す
現職は私の学び直しを知り、在学中に声をかけてくれた企業です。AIITで学んだことをまずはここに還元し、イノベーションを起こすことが当面の目標です。その後は起業し、地域の子育て環境や保育士の労働状況にまつわる課題に取り組みたいと考えています。妻が保育所を経営しているため、私にとってはそれが身近な課題なのです。
そしてもう一つ、密かな目標があります。AIITを修了してから、レポートや試験のない日々に物足りなさを感じていました。そこで、すでに科目等履修生と本科を合わせて8年学んだAIITに改めて入学し、AIIT在籍最長年数を達成したいと本気で考えています。