English

第146回コラム「未来」と「将来」

2023年9月22日

高嶋 晋治 教授

皆さんは「未来」と「将来」の違いは何だと思いますか?

「未来」より「将来」の方が時間的には近くを指す、という考え方があるようです。また、「未来」は客観的な先の時間、「将来」は主観的な先の時間を指すとも言われています。

自分の未来の職業や夢を語る時、「将来〇〇になりたい。」「将来〇〇をやりたい。」と言う方がしっかりくるのではないでしょうか。このように「将来」には主観的な先の時間、則ち人の「意志」が込められる、と私は考えています。

企画やデザインを考える時には未来予測が必要な場合があります。

企画やデザインを具現化するリードタイムが必要な場合には特に未来想定が重要になります。例えば、自動車開発に2〜4年かかるとすると、その商品企画やデザインは世に出る3〜4年先の世の中を想定しておかないと商品を発表した時に時代が変わってしまっています。世間とズレた商品を世に出したら、商機を逃し、開発費が無駄になり、企業の存続に影響します。

私は、3〜5年くらい先を「短期未来予測」、6〜10年くらい先を「中期未来予測」、11〜15年くらい先を「長期未来予測」と分類して整理します。この分け方には厳密な規定はありません。正直、未来がどうなるかは誰にもわかりません。
しかし、正確に「予測」はできなくても、未来を「想定」して、その条件下での「課題を明確化」して「解決策を具現化」することが企画やデザイン行為には重要なことです。

未来想定には経営学であるような3C、SWOTなどの手法も一般的に使われますが、私は「天地人彼我」(てんちじんひが)という分類で事実事象の整理を行います。

「天」は自事業や一企業では決められない法律、政府の掲げる制度/政策の計画、温暖化のような気候変動などの動向/課題です。

「地」は少子高齢化や労働力不足などの社会全般的動向/課題や自事業/企業の業界、対象とする人周辺の動向/課題です。自動車業界では電動化や自動運転の動向などです。

「人」(じん)はライフスタイル、価値観、嗜好の変化/動向/課題です。これは社会動向の一部ですが、人の部分は切り離して整理します。

「彼」(ひ)は自事業や対象者の競合相手の動向(現状/実態〜将来戦略)です。ここは競合の設定が難しいところでもあります。例えば自動運転や車中泊の競合相手は車業界ではなくホテル業界かもしれません。

そして最後に「我」(が)は自社、自分の強み/弱みです。最近では、自分だけではできないことを明らかにし、誰と組めば実現できるかを見極めるためにも重要な要素です。

それらを「需要」と「供給」の観点で短期、中期、長期で整理します。

事実事象を中心に情報収集するので、当然、遠い未来に関する情報は少なくなります。また、遠くなればなるほど、想定外が起こる可能性も高まります。また自然災害や疫病のように突発的に起こる事象は予測できません。またVUCAと言われる先の読めない複雑な世の中になっているので、未来想定にも限界があります。

そこで、もう一つの未来想定の観点として必要な要素が「将来」の観点です。則ち、「意志」です。つまり、「自分はどうありたいか?人や自然はどうあるべきか?」です。
近い未来においては、情報も多いのである程度の想定ができ、その上での「ありたい姿/あるべき姿」となりますが、遠い未来においては、意志の占める割合が多くなります。

しかし、この未来想定の目的は、この「ありたい姿/あるべき姿」の精度を上げるためです。なので、雑誌記事など憶測情報ではなくできるだけ、信頼できる情報源の事実事象を元に「意志」のある「将来」を見定めることが大切なのです。

ここから先の企画やデザインのクリエーションについては、ここでは充分に説明できないので、ご興味ある方は遠慮なく私までコンタクトください。
takashima-s[at]aiit.ac.jp (メール送信時は[at]を@に変えてください)

いずれにしても、「未来」は「将来」を「どうしたい」と言う「意志」がないと創れないと言うことなのです。そこからバックキャストして、「そうなるにはどうする、何をする」これが「デザイン思考」なのです。

皆さんの「将来」はどうありたいですか?

それを想い、そこに向かってアイデアや技術を具現化して社会にインストールすること、それが「イノベーション」です。
皆さん、一人一人の想いで、「将来」の世の中を助け合って「幸せ」にしましょう!

PAGE TOP