第6回インタビュー
仕事に生きるプロジェクトの実体験
―タテ・ヨコのつながりを得たことも成果―
今回のインタビュイー
石野田大典さん
國澤PBLでフィールドワークをする石野田さん(写真右側)
プロジェクトをふり返って、どんなことを感じますか。
石野田 國澤PBLの魅力は、社会を巻き込んでいけるところです。行政や地域の中小企業にインタビューし、結果として2社と契約を結んでプロジェクトを進めていきました。学生が主体となって企画の作り込みや交渉を行ったわけで、提案営業を学ぶ機会にもなったと思います。また、メンバーと一体になってプロジェクトを進めるために工夫したことは、組織の中堅層にもっとも求められる、フォロワーシップの素養づくりです。
どんな工夫をしたのですか。
石野田 たとえば、プロジェクト計画書の1ページにはコミュニケーション計画をかなり細かく記しました。メールや口頭、ドキュメントなどの伝達手段をどのような場面でどのように使って、プロジェクトの進行を可視化して共有するのか。当たり前のようですが、当たり前のことを具体化することによってコミュニケーションの重要性をきちんと認識できます。そうしたベースづくりがその後のプロジェクトの進行に大きな影響を与えるわけです。私自身は「傾聴する」姿勢を身につけられたと思います。地域でのインタビューはもちろんのこと、メンバー間のコミュニケーションでも、相手の思いや考えを理解しようと心がけながら自分の考えを伝えるトレーニングができました。スケジュールの管理では、メンバーとの情報共有という意味では、何をするのかではなく、何を創り出すのかというように、行動ではなく成果物を意識したタスクへの落とし込みが重要だと学びました。その状況を実体験できたことは、たいへん貴重でした。
コンピテンシーを獲得できたわけですね。
石野田 そうですね。メンバーのうち2人は、修了後デザイナーとして就職しましたが、PBLの経験が糧になっているようです。私自身も昨春、区の経営改革を推進する部署に異動しましたが、新設組織だけにプロジェクト推進の手法を生かす機会が多々あります。また、AIITの認定講師として、オープン・インスティテュートなどで活動ができるほか、AIITをベースとして広く社会とのつながりを保てますし、國澤先生のPBLをサポートすることもあります。AIITを通じて、先輩から後輩までのタテのつながりと、地域や社会、また学際的なヨコのつながりを獲得できました。
あらためてAIITの魅力を教えてください。
石野田 21世紀は「モノの世紀」ではなくて、「人の世紀」だと言われます。複雑化した社会をよりよいものにしていけるのは、人の力に他なりません。それも複数の専門分野を持つ、学際的、業際的な人材が不可欠です。PBLを中心としたAIITでの学修は、まさに人の世紀を担う人材への成長を促すもので、この点にAIITの大きな魅力があると思います。