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デザインの領域拡大をねらい学び直し作風を一変させる

鈴木 一彰さんの画像

創造技術専攻 2014年修了
多摩美術大学 出身

アールエヌエー 代表・デザイナー 鈴木 一彰さん

震災を機に実績を振り返り今後を考え直す

 AIITに入学する前と修了後で、インテリアデザイナーとしてのポートフォリオは一変しました。

 インテリアデザインの世界は企業で組織的に働くことが潮流となり、フリーランスとしての実質個人での仕事は限られます。それでも独立して以降、仕事が途絶えることはありませんでした。転機は2011年の東日本大震災です。当時建設工事が延期や中断で減少。私も増えた空き時間で、それまでの仕事を見直すとともに今後に思いを巡らせ、デザインの学び直しを考えるようになりました。

 AIITを学び直しの場としたのは、ここがプロダクトのデザインを強みとしていたから。インテリアデザイナーとしてキャリアを積んできた私ですが、空間や場づくりへのデザインアプローチに偏りを感じていました。また、デザインする空間は、常にオーダーメイド。クライアントも物件のオーナーなど特定の人です。これに対しプロダクトデザインは、大量生産を前提とした、不特定多数のユーザーから対象を特定するなど、私にはインテリアデザインの対極に位置づけられました。一方で空間を構成する床、壁、天井の素材や設備、家具などはプロダクトの世界でつくられたものが大半。そのためプロダクトデザインを学び、デザインの領域を広げることをねらい、科目等履修生を経てAIITに正規入学したのは2012年。40歳を迎える年のことでした。

デザインという行為の根本を追求する

 AIITでは、多様な知識や新規の視点を獲得しました。例えばそれは、美術大学生だった頃は体系化された理論が日本ではマイナーだった、デザイン思考であったり、デザイン行為にイノベーションを起こす発想であったり。想定する数十年先のありたい姿から逆算し、数年先や現在のあるべきデザインを提案するなどの考え方を学びました。その姿勢を仕事にも反映させ、「いま、なぜこのデザインか」を客観的な視点で言語化し、根拠をもってクライアントに説明できるようになりました。

 また、港区芝の商店街をデザインの力で活性化させるPBLは、誰のため、何のためにデザインするかを深く追求するきっかけとなりました。学びの収穫を日々実感し、即仕事に取り込むうちに学びと仕事との境界が薄れ、いつしか教室や夢工房※でも仕事のプロジェクトに見立てながら学ぶ時間が増えていました。

不可分となったAIITと仕事

 人との出会いも、AIITで得た貴重な財産です。修了生の有志で結成したチームでプロダクトデザインした作品が、ロシアのデザインコンペで入賞を果たしたのも、AIITで学んだからこそのつながりと経験です。さらに、授賞式で知己を得たロシアのデザイナーとはその後、仕事を協働するなどの交流が続いています。

 既製品を使って空間を埋めるだけでは飽き足らなくなった私は、内装材や家具のデザインや製作、施工工事でも自分の手を動かすようになり、新たなユニークな作風が評価されるように。夢工房※での試作品の製作経験は現在も活かされており、私の仕事とAIITはいまも不可分といえます。

※夢工房(東京夢工房)…大型モニタ−等が設置されたミーティングスペースと、3Dプリンター、レーザー加工機等が設置されたワークスペース。

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