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起業後>学び直し
起業には、夢が必要。継続には、変化が不可欠

井上 匡さんの画像

創造技術専攻 2015年修了
横浜市立大学 出身

株式会社 東京リテラシー 代表取締役社長 井上 匡さん

AIITでの学びは即日社内に持ち帰る

 企業広報の制作会社を経営して、20年が経ちました。この期間、業界での存在価値を維持できたのは、社会の変化に先んじた手当てを怠らなかったためと自負しています。広報のメディアが、新聞や雑誌の紙媒体からインターネットに移行する際も、一早くWebコンテンツの制作を事業に取り込みました。その後、社会のコミュニケーションは日進月歩のICTに先導されます。しかも、最先端のテクノロジーでさえ数年後には更新され、もはや現場の経験が仕事上の資産になりません。経験則に頼る社会変化の先読みに限界を感じた私が、AIITの門を叩いたのは2012年。体系的な知見に基づき時代を先読みする“ナビゲーションシステム”を頭の中に構築することが目的でした。

 AIITで学んだことはその日のうちに会社に持ち帰り、社内で共有しました。学びを実務につなぐ取り組みは、2度目の学び直しでも継続しています。

ICT環境の変化を先取りし2度目の学び直し

 再びAIITの学生になったのは、修了から3年後のことです。すでに自社の業務は、Webコミュニケーションやモバイルコンテンツの制作にシフトしていました。その中で特に顕著な進展を見せたのが、モバイルの分野。スマートフォンの普及に伴い、情報発信の主体は個人に移行し、この流れがさらに強まることは間違いありません。

 Webを介した企業のコミュニケーションも、相手をマスで捉えているばかりでは通用しなくなるでしょう。特定できる個人の属性や行動の履歴、そして個人の体験価値のコンテクストに基づく情報設計が求められる時代に、最も体系的に整理されていると私が着目した理論がUXD(User Experience Design)。その手法を自社のコンテンツ制作に取り込むため、あらためて半年間、AIITの講義を受講したのです。

 UXDはプロダクトの世界でも注目度が高く、AIITの講座には受講希望者が殺到。ネットによる受講申し込みは、秒単位で定員を満たします。5Gによる通信が本格的に運用される前に、UXDの手法を社内に定着させたかった私は、受講を確実にするため、超高速接続サービスを利用できるプロバイダーに、会社の契約を変えたほどです。

 その甲斐があって再びAIITに学んだ私は前回と同様、UXDに関する知見をその都度、会社に持ち帰りました。かつて紙媒体からインターネットへの転換を経験しているスタッフは、情報設計の新たな手法も飲み込みが速く、私が受講を終えるのとほぼ同時期に、自社のWebサイトをUXDの考え方を活用してつくり替えることができました。

企業価値を保ち続けるために変化を前提とする覚悟を

 会社を興す人は誰でも、既存にない視点や技術に対する自信と夢を持っていると思います。それが起業の原動力になるのですが、会社を継続・発展させるためには、一番大切なものだけを残し、事業を根底からでも変える覚悟が必要だと考えます。私の場合、コンテンツの制作会社であり続けることだけは貫き、それ以外は創業時の姿を一新したといえます。その変化の方向性を示唆してくれたのが、AIITでの学び直しと、学びを通してつながった人的ネットワークであると確信しています。

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