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起業後>学び直し
未知の世界に分け入る学ぶこと自体が目的

吉田 育代さんの画像

創造技術専攻 2011年修了
関西大学 出身

フリーランスライター 吉田 育代さん

仕事に直結しない学びをあえて選択する

 ライターとして独立して20年ほどキャリアを積んだ頃、AIITの創造技術専攻で学びました。ITを専門領域としていたため、情報アーキテクチャ専攻の方が仕事に役立つのではないかといわれたものですが、私の考えは違っていました。かつて創造技術専攻を取材したことがあり、デザイン教育と工学を融合させたユニークなカリキュラムに驚きました。正直にいえば、ここからどんな人材が生まれるのか想像できませんでしたが、私にはその「分からない感じ」がよかったのです。

 リーマンショック後、フリーランスの仕事は減るだろうと予想し、空く時間を利用して学校に通おうと考えたことが、学び直しのきっかけ。当初から仕事に通ずることを学びたいとは考えていません。むしろ、未知の分野に足を踏み入れることに期待感がありました。要するに、学ぶこと自体が目的。ただし、高い成績を収めることには力を注ぎました。将来、留学を考えたとき、学業の成果を表す数値が重要な意味を持つからです。

実社会では経験できない集団の一員になる

 入学してみたら懸念した仕事の減りはなく、社会人学生になった分だけ忙しさは増してしまいました。それでも時間をやり繰りして学んだ2年間で、その後の生活や仕事に活きる様々なものを手に入れることができました。

 一つは、プロジェクトをチームで完遂させる経験です。AIITでは授業の中で、計画立案から成果発表まで、メンバーが膝をつき合わせて議論しながらプロジェクトを進めます。2年次のPBLがその代表ですが、AIITでは1年次の講義にも「スモールPBL」と呼べるような、プロジェクトを通した学びが設定されていました。

 会社勤めをしていれば、そうした経験があるでしょう。しかし、社内のチームは上司や部下など、あらかじめ地位や役割が決まっています。ところがAIITで組むチームは、ベテランの企業人と孫ほど歳の離れた新卒の若者が、学生としてフラットな関係を築きます。社会人同士でも多様性が高いため、コミュニケーション力が鍛えられます。実社会ではなかなか経験できない、そうした集団での交流機会を大切にしようと、私は学外でも催しを企画して熱心に周囲を誘いました。

働きながら学ぶ習慣がつき社会人学生を継続

 修士課程ならではの経験としては、海外で研究論文を発表したことが挙げられます。熟練工の技を科学的に分析したPBLの成果を論文にまとめたところ、英訳すれば学会で発表できるかも、と促されました。これもまたとないチャンスと思い、四苦八苦しながら英語の論文を書きあげた結果、ハンガリーで開かれた学会でそれを発表する貴重な機会を得られたのでした。

 そうした数ある経験の中で、最も価値ある財産になったのは、仕事をしながら学ぶ習慣が身についたこと。その習慣を捨てまいと、AIIT修了後、関心のあった言語学の講座を国立大学で受講。世界に約7,000あるとされる言語をできる限り学ぶという壮大な目標を立て、社会人学生を続けています。

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