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学び直し後>起業
既存の常識や社会のルールに一石を投じるサービスを設計する

上村 隆幸さんの画像

創造技術専攻 2017年修了

おっとっと 株式会社 代表取締役 上村 隆幸さん

完璧なマネジメントを工学的手法に求める

 完璧なマネジメント――AIITで学びたかったことは、この一言に尽きます。仕組みや仕掛けなどをことごとく設計したサービスの開発と、自分の意思を隅々にまで行き届かせた経営のための、知識や手法を求めていたのです。

 学生時代に事業を興し20代で起業して以来、約30年にわたり会社を経営してきました。時宜を得た商材を見極め、長者番付に名を連ねたこともありました。ただし、成功したのは国の政策に即した事業ばかり。自身の興味・関心で始めた商売が、満足できる利益を生むことはありませんでした。

 政策に誘導されたビジネスは、誰がやっても上手くいきます。経営者の才覚でないことは、自覚していました。しかも商材が魅力を失えば、また次を探すことの繰り返しです。その経験から引き際を誤らない目は養われましたが、商材を入れ替えることなく、そのバージョンアップにより自社を成長させるサービスを設計したいという思いが募りました。AIITの門を叩いたのは、その思いを実現するため。これまでの経営者人生で最も大きな課題を乗り越えるにあたり、サービスの設計やマネジメントを工学的に考えるAIITの方向性に期待したのです。

PBLと会社の事業を並行させ相乗効果を得る

 入学して驚きました。AIITで学べるユーザーの笑顔まで設計するマネジメントは、私が考えていた「完璧」よりも徹底していたのです。情報アーキテクチャ専攻のカリキュラムも見て、興味を覚えた授業を受講しました。私が学ぶのは足りない知識を得るためであり、学位の取得が目的ではなかったからです。在学中はもとより、いま振り返っても、AIITでの学びに無駄はなく、同級生との会話にもヒントがあふれていました。

 学んだことは、その日のうちに職場に導入しました。なかでもPBLは経営者としての強みを活かし、チームの了解を得た上で、学びとしてのプロジェクトと会社での事業化を並行して進めました。その相乗効果もあり、介護施設の利用者とスタッフの満足度を共に高めるシステムを構築できました。

 利用者には廉価でサービスを提供し、スタッフには一般以上の賃金を払えるシステムは、既存の業界からは常識はずれや実現不可能と酷評されましたが、すでに事業化に至っています。

サービスの設計から会社の設計へ

 AIITを修了して半年後、高齢者が高収入を得て働くサポートをする新会社を立ち上げました。PBLで設計したシステムによる住宅型有料老人ホームをオープンさせた会社からは経営者として退き、投資家として関わっています。

 サービス設計とマネジメントを学んだAIITでの2年間を経て、私の関心は経営者や従業員の働く意欲を含め、会社自体を設計することに向きました。新会社も、私が考えた完璧なマネジメントシステムが稼働するまでは、売り上げをゼロとし、システムが動きだし事業が軌道に乗った暁には、経営を後進に任せる計画です。私の喜びは目の前の売り上げではなく、社会が固定されたものとして捉える常識やルールに一石を投じることなのです。

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