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島田 晴雄 理事長 挨拶

島田 晴雄 理事長

 本日は産業技術大学院大学ご卒業、誠におめでとうございます。
皆様の2年に及ぶ真剣な努力とご研鑽、そして、今日の晴れの卒業になりましたこと心からお祝い申し上げたいと思います。それから、そちらに座っておられるご家族の皆様が大変なご苦労で支えてくださったと思います。ありがとうございます。また、先生方、立派なご指導をしてくださり、また、ご来賓の皆様、そして、多くの関係者の皆様、皆様のいろいろなご支援が無ければですね、今日の皆様の成果を上げることはできなかったと思いますので、本当に心から御礼を申し上げるとともに、お祝いを申し上げたいと思います。

産業技術大学院大学は、専門職大学院で、これは、今、川田学長が力説なさいましたが、技術の分野における、高度な学び直しの大学院であって、全国でも極めて突出した成果を上げており、そういう学塾でございます。全国から注目を浴びているわけですが、この大学院のモットーは、キャリアアップ、キャリアチェンジ、スタートアップということですね。今までやってきた仕事よりもうちょっと高度な仕事をしたい、あるいは、これはこの先使えるのかどうか、もっと使えるような仕事をしたい、そして、自分で事業を起こしていきたい、こういうようなニーズに応える専門職大学院でございます。

 釈迦に説法ですけれど、非常に激しい技術革新の時代ですね。これは世界もどんどん進んでいますし、日本でも進んでいる。歴史的に見ると、世界史の中で第4次産業革命の真っただ中という風に言われるわけですけれど、昔の蒸気機関が産業革命を起こして、内燃機関の自動車・飛行機の時代、それから通信がものすごく進歩して、インターネットで地球がすべてつながる。そういうものを踏まえた次の産業革命、社会革命の時代と言われていますが、情報を活用する、データを活用する、生命科学が進む、そういうものを総合して生活を良くし、企業を強くするためにやっているわけですけれど、皆様肌で感じておられると思いますが、技術革新のスピードはものすごく早いんですね。数年経つとものすごく変わる。しかも、研究者や企業だけじゃなく、一般の人々の生活までも数年ごとに変わる激しい変化の時代です。皆様はこのような時代の先端を切って走ろうとしているわけです。

それから、先ほども川田学長がおっしゃっておりましたが、今、世の中で人生百年時代と言われているわけで、あちこちでこの言葉が聞かれますね。皆様、昔はですね。古稀の時代というのがあって、70歳過ぎるとよく生きていたねと言われ、3,000年前の話ですけれど、だから、古稀のお祝いをしたと。今、古稀を迎える人は2,000万人いるわけですね。

「100歳以上の方は何人いるか知っていますか?」
「6万7,000人いるんですよね。」

平成29年度学位授与式風景

 そういうことですから、物理的には、生物化学的には人間はどうも125歳までは生きられるらしいですね。生物としてはそこまで持つのですけれど、そういう状況の中で、20歳代までに学ぶことで残りの80数年生きて行こうというのは無理なんですね。基本的に。ですからリカレントエデュケイション、何年かおきにリニューアルしないと、100年、80年こなすことは難しい。ということを叫ばれているけれど、なかなかそういうわけにはいかない。やっぱり、20代前半までに教育を終えて、死ぬまで何とかもたそうとするのは無理なんです。技術は激しく進歩しているわけですから。そこでリカレント、本当に重要なんですが、まさに産業技術大学院大学は、技術の分野で実現しつつあります。特に皆様がしっかり勉強されたPBL(Project Based Learning)は、産技大がたぶん日本で一番進んで、実績があるということですから、皆様はそういうPBLの演習学習をマスターされたと思いますけれど、実際にプロジェクトを組んで、それを組織して、運営して、成果を出す。目的もあり、ターゲットもあり、いつまでに出す、というのをさんざんおやりになった。これが一番学びが身につくし、また、役に立つんですね。これは先ほども川田学長がおっしゃいましたように、これからの日本が一番必要とする学び方で、リカレントエデュケイションですね、文科省も通産省もこれに非常に興味を持っております。産業界からも熱い視線を注がれております。世界でも注目されております。特にアジア諸国に非常に熱い視線が注がれておりまして、理屈だけじゃない、実際に実践して計画を組んで、チームで成果を上げているというのは、そういう非常に特徴を持った大学院ですけれど、皆様、本当に様々な背景から様々な理由でこの専門職大学院に来られて時間を過ごされてきたわけですね。

 今日、ご卒業された方々は、主に2年前、本学の12年の歴史の中では、いささか入学者の数が少なかった年ですね。ですから、少数精鋭ですよね。その皆様方の背景は社会人が44名、学校を卒業したけれども特に仕事についていなかった方が16名、学校を出たばかりの方が5名いらっしゃるわけですね。それだけでも多様な背景ですけれど、39名の方が情報アーキテクチャを専攻されたわけですが、その中で中国の方が5名、ベトナムの方が1名卒業される。それから、創造技術専攻は26名の方が卒業証書を受け取られておりましたが、中国の方が10名いらっしゃいます。台湾の方が1名。そして、ご年齢も本当に皆様様々で、20代22名、30代17名、40代14名、50代8名、60代4名、今度、新しい年は、70代の方が2名入るそうです。こんな学校は日本にないんですね。本当に様々な背景、様々なキャリア、様々な年齢層、そういう方が一丸となってProject Based Learningをやって、素晴らしいことだと思います。

今日、卒業証書を獲得された方は、ご出身の会社に行かれる方もたくさんいらっしゃいますが、おそらく会社に帰ってキャリアアップになるんだろうと期待しております。あるいは新しいところに就職する、求職活動をまだ続ける、外国の方で帰国される方もいらっしゃるでしょうが、様々な分野に皆様これから展開していかれるわけです。そういう中で、皆様がこれだけ多様な背景やキャリア、多様な思いや願いがある一方で、実務に即した技術の勉強をしようということでは共通の願いがあるわけです。そういうものを共有した、非常に貴重な経験であり、また、非常に貴重な仲間であると思います。

この産業技術大学院大学は、皆様よくご存じのAPENという組織の主催者になっているわけですね。APENは、Asia Professional Educational Network。今、その会長は川田先生でいらっしゃるので、私どももAPENの活動を拝見すると本当に驚きます。仲間の大学はアジアの超一流の大学ばかりです。なかなかこの方々とふつうは付き合えない。そういう方々とネットワークを持って、皆様プロジェクトを作って、インドネシアなどに行かれたかと思いますが、これも非常に貴重な経験だったと思います。
そういういろいろな活動をご指導いただいた川田学長、先生方に改めて感謝しております。

島田 晴雄 理事長

 この多様な体験を持った、多様な思いを持った、しかし、2年間同じ目的で頑張った。この仲間を皆様のこれからの将来にとって、人生にとって非常に貴重な掛け替えのない財産であると思います。私などいい年になっておりますから、過去の人生を振り返りますと何が人生で一番貴重か、もちろん大学も何もかも重要なんですが、一番重要なことは誰に出会うか誰を知るかです。人生でお金なんていうものは、積もるときもあれば、消えちゃうこともある、うたかたですから大したことはないのです。自分の命の次に重要なのは、「誰を知っているか」、「どういう友達がいるか」。恐らくこの産業技術大学院大学の2年間で、そういう掛け替えのない友達を日本の中でも、あるいは国外でも選べたのではないかと思います。是非、その人材・経験を大切にしてください。そういう方々にお会いできたんですから、是非、産業技術大学院大学を卒業なさっても、産業技術大学院大学という活躍の場面があったんだということを時々思い出して、また、門を叩くというようなことをしていただけるといいのではないかと思います。

 学長先生に聞くと、入学した人は千百何十名、修了された方は900名をちょっと欠けるようですけれど、皆様いろいろなところで活躍されており、皆様の先輩方にはもう60名もの方がスタートアップで会社を興して、そういう財産を皆様持っているわけですから、どうぞ卒業された後も産業技術大学院大学に帰ってこられて、友達とも一緒になって、先生方とも一緒になって、次の人生を考えるということがあってもいいかと思います。

去年の12月ですか、ホームカミングデイというのをおやりになったようで、もっともっとホームカミングを大切にされるといいと思います。人生で何が大切かというと誰に会うか。これ以上に大切なことはないということをしっかりと胸に刻んで、これからの人生何が起こるかわからないので、大いに羽ばたいて頂きたいと思います。

最後に皆様に申し上げたいのは、これまでの経済状況は比較的良かったのですが、恐らくはこの良い景気はそうは続かないと思います。数年後には結構つらい時が来るはずなんですね。これは日本だけじゃなく世界中そうなんです。そういう時に試されるのは何かといいますと、量的な拡大というのは続かないんですね。質ですね。高い質。ユニークな質。そういうオンリーワンを身につけられることが重要です。もう一度ここで学ばれたことを振り返り、自分は本当にオンリーワンか、他の追随を許さないものを目指して本当に頑張っていけているかどうかを常に考え、試されるといいと思います。そうすると益々この大学院で学んだことが、皆様の糧になると思います。

そういうことで、今日はよく頑張られて成果をあげられたことを改めて心からお祝いを申し上げたいと思います。

ご卒業おめでとうございます。

平成30年3月17日
公立大学法人首都大学東京 理事長 島田 晴雄

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