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川田誠一学長 式辞

川田誠一学長

 本日、修士の専門職学位を授与される65名の皆さん、誠におめでとうございます。
 本日ここに情報システム学修士39名、創造技術修士26名が新たに生まれます。ご列席の来賓の方々、島田理事長はじめ法人幹部、教職員共々、皆さんの学位授与を心からお祝い申し上げます。また、これまで皆さんを支えてこられたご家族や、関係者の皆様に、心よりお祝いを申し上げます。

 さて、平成18年に開学以来、今年度10月までに、合計1,110名の学生募集を実施し、1,159名の学生が入学しました。そして本日は開学以来11回目になる学位授与式でございます。累計しますと平成18年に開設した、情報アーキテクチャ専攻では、情報システム学修士488名、平成20年に開設した創造技術専攻では、創造技術修士384名、合計872名の修士を本学は送り出すこととなりました。長期履修生として長く学んでいる方や、業務多忙、転勤、出産などで学業を中断せざるをえない方がいる中での数字であります。

さて、産業技術大学院大学で学位を授与される皆さんは、情報システム学修士(専門職)、創造技術修士(専門職)のように、それぞれの専攻が目的とした高度専門職人材育成の、専門職学位過程を修了した証としての学位が授与されます。専門職大学院大学だけが付与できる専門職学位であります。

 専門職大学院はまだ広く社会に知られているとは言えません。これを踏まえ、文部科学省のホームページには、一般向けの専門職大学院の説明がございます。『専門職大学院は、科学技術の進展や、社会・経済のグローバル化に伴う社会的・国際的に活躍できる高度専門職業人養成へのニーズの高まりに対応するため、高度専門職業人の養成に目的を特化した課程として、平成15年度に創設』されたものであります。この制度創設時から法曹人材を育成する法科大学院、会計、ビジネス、技術経営、公共政策、公衆衛生などの、様々な分野で開設が進み、平成20年度には、実践的指導能力を備えた教員を養成する教職大学院が開設されております。産業技術分野の高度専門職人材を育成する専門職大学院としては、東京大学が設置している原子力専攻の専門職大学院や、兵庫、神戸に設置されている私立の情報系専門職大学院があるものの、本学のように高度情報人材育成と、デザインと工学を融合した高度ものづくり人材育成を総合的に実施している専門職大学院は日本でも本学だけであります。このユニークな教育の実践について文部科学省をはじめとして政府機関からも本学に大きな期待が寄せられるようになってきました。
1つの事例としては、昨年6月に政府が閣議決定した、未来投資戦略2017「Society5.0(ソサエティ5.0)」の人材育成のKPIの1つとして、2022年までに大学、専門学校等の社会人受講生を100万人とすることが掲げられました。現状の日本の社会人受講生数は50万人に届いておりませんので、あと5年で2倍以上にさせるということであります。この100万人という数は、我が国の現在の18歳人口約120万人に匹敵する数字であります。この規模の社会人が大学や専門学校で学び直す、リカレント教育を実現しようというのであります。このような状況において、本学がリカレント教育における高度人材育成における先頭を走っていると言っても過言ではないと考えております。実際、昨年11月には、文部科学省が本学を研修場所に選び、北は北海道から南は沖縄までの大学職員106名が本学を訪れ、社会人大学院の運営のノウハウを学びました。そのときの講義で私が協調したことは、社会人が学びやすい環境を大胆に作っていくことが重要であること、高校卒業後直ちに大学に入学し、大学院に進学した学生を受け入れる従来の大学院の常識から一旦離れて、社会人、それも21歳から70歳台までの多様な経歴を持った学生を対象とした学びの仕組みを構築する必要があることを力説しました。今後は、本学のような大学院が当たり前のように運営される時代が来るのではないかと考えております。

平成29年度学位授与式風景

 本学の特徴の1つであるPBL型教育についても、国内外で注目されております。そのような状況に鑑み、本学のプロジェクト型教育の方法論をAIIT PBL Methodとして和文、英文それぞれを取りまとめました。これを内外に発信していきます。本日学位を授与された皆さんは、このAIIT PBL Methodを実践する授業科目の履修により高い職務遂行能力を獲得されました。このことは皆様の今後のキャリアアップ、キャリアチェンジ、スタートアップにおいて大きな力となることを確信しています。

 さて、専門職大学院が、社会からの高い評価を得て、将来に向けて発展を遂げていくためには、各専門職大学院が関係する産業界、学教界、職能団体、地方公共団体等との連携を図りながら、制度の趣旨を踏まえ、理論と実務を架橋した実践的な教育の充実に、不断の努力をしていくことが求められております。本学では、日本IBM最高顧問の橋本氏を委員長として、日本を代表する産業界のリーダーの方々を委員とする運営諮問会議を設置しています。また、地域の自治体や信用金庫などの諸機関や産業界と連携し、東京都が設置した専門職大学院にふさわしい活動を継続し、実施してきました。本日修了される皆さんは、このような特色あるユニークな教育プログラムで学ばれました。そして皆さんが実践されたプロジェクトの中には、産業界との連携や、自治体との連携、更には本学と連携しているASEAN諸国の大学との共同プロジェクトなどがあったことでしょう。アジャイル開発、ビッグデータ活用サービス開発、観光ICT、ICT医療応用、サイバーセキュリティ、人工知能、特に深層学習の応用、サービスデザイン、コミュニケーションデザイン、地方創生、ロボットとの共生、高齢化対策モビリティ、貧困層ビジネスによる国際貢献、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会関連プロジェクトなど、いずれも先進の課題を独自に設定し、斬新な方法を開発して課題解決に挑まれました。その発表会の熱気を保ったまま、皆さんはこの場に集まっております。家族との生活や仕事との両立、多様な学生との交流を進めた中で、色々な課題に直面したことと思います。それらを克服し、学業を成就され、この日を迎えられた皆様に改めて敬意を表します。

川田誠一学長

 さて、皆さんご承知のとおり、本学ではコンピテンシーの獲得を一つの課題としています。全学共通のメタコンピテンシーは、コミュニケーション能力、チーム力、継続的学修と研究の能力であります。これらの用語は広く重要性が認識されているので、ややもすると陳腐な言葉と見なされがちです。しかし、「コミュニケーション」のその言葉の本来の意味である「分かち合う」という意味で理解し、人を説得するのではなく納得していただくという視点でコミュニケーション力を発揮するには、自身の考え方やマインドを根底から変えることが必要です。皆さんは本学のPBL型教育を通じてそのような実践を続けてきたことと思います。そして一人の天才の力とは異なる、チームが発揮する天才の力で、様々な課題を突破する能力を獲得したことと思います。更に本学で学んだ成果をさらに発展させるために継続的に学修や研究を進める意欲を獲得したことと思います。このように更なる高みを目指して本学に学び、本日学位を授与される皆様を我々は誇りに思います。どうか皆さん、本学で学んだ知見を活かし、幸せな輝かしい人生を歩んでください。
 本日は誠におめでとうございます。

 平成30年3月17日
産業技術大学院大学学長 川田誠一

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