English

キャリアアップ 20代

尾崎 敏司さんの画像

尾崎 敏司さん

PROFILE
トレンドマイクロ株式会社所属

京都大学大学院修了
情報アーキテクチャ専攻 2015年修了

門外漢だったITの感性を養う

企業で動くITの現状を教員や社会人学生から学ぶ

 大学ではプラスチックの物性を研究し、修士号を取得しました。ITのセキュリティ会社に就職したものの、入社までにコンピュータやインターネットを深く学んだことはありませんでした。新入社員向けの研修はありますが、自分なりに仕事の基盤をつくろうと考え、働きながら学べるAIITへの入学を決めました。
 企業がどのようなシステムを組んでITを動かしているかなどの実態を、実務経験のある教授陣や学生である現役の職業人から教えてもらえることも期待しました。実際、外部の人間が知る機会の少ない企業内のサーバーについて知ることができました。

研修と授業の相乗効果でITへの理解を深める

 入社後しばらくは、会社で研修を受けながらの通学となりました。その間は目が回るほどの忙しさでしたが、それを乗り越えたことで多忙への耐性が強化されたように思います。
 会社と大学とで並行して学ぶことの相乗効果もありました。研修で教えられるのは、仕事に即使える内容。その基礎部分を大学の授業が補ってくれ、学術的な基盤と実践的技法をつなげながら理解を深めていくことができました。また、研修ではほとんど触れられずAIITで触れる機会の多かった仮想マシンは、後から仕事で頻繁に利用することとなります。現在これを柔軟に扱えるのは、AIITで基本的な理解を済ませていたからといえます。

仕事を常に先取りしたAIITの授業

 AIITでの2年間を振り返り、最も思い出深く記憶に残っているのは、出自の異なる6人でプロジェクトを完結させたPBLです。私たちが取り組んだテーマは、映像におけるプライバシー侵害の自動判定。プライバシーを侵す映像とは、という定義づけを議論することから始め、動画の解析技術を用いて画像を判定する概念実証(POC)を開発します。開発の間には、学外で発表する機会を持ち、専門家と意見交換を行いました。
 このプロジェクトで扱った機械学習の技術も、その後の仕事で生かされます。仮想マシンもそうであったように、AIITの学びは常に私の仕事を先取りしてきたことになります。また、一つのプロジェクトを完遂させた経験により、仕事において次の展開を推量できる目が養われました。先を見通せるようになったことで、突発的に起こる問題の所在を的確に判断し対処できるようになり、仕事への自信をもたらせてくれました。AIITの授業が入学時は門外漢だったITに対する感性を育ててくれたおかげで、確かな背景を持って日々の仕事に打ち込んでいます。

金田 桂一さんの画像

金田 桂一さん

PROFILE
株式会社村上開明堂所属

静岡大学出身
創造技術専攻 2016年修了

性格が変わるほどの刺激

東京の大学であれば就職活動にも便利

 静岡大学で電気電子工学を学び、AIITに入学しました。同級生の多くは静大の大学院に進みますが、私は専門分野の研究を続けるより、専門職大学院で実践的に学ぶことに魅力を感じました。
 社会人をはじめ全国から集まる多様な人と机を並べる経験から、学べることもあるでしょう。また、地元での就職を希望していましたが、東京であれば地方の企業の説明会や採用もあり、就職活動も可能と考えました。
 いま自宅から通勤しており、その選択は正しかったと確信しています。それは、地元での就職がかなったからではなく、入学当初に想像していた以上のことを2年間で学べたから。特にPBLほか多くのグループワークを経験し性格も前向きに変わり、自主的に物事に取り組むようになったことを自覚しています。

スピード感ある周囲のリアクション

 学部までの私は、人の後に付いていくタイプ。そのような性格でも、上下関係がはっきりしている大学の研究室での卒業研究には支障を感じませんでした。
 しかしPBLでは、チーム全員が分担した役割に自主的に臨まないとプロジェクトが進みません。社会人の同期生にその点を指摘された私は、それまでを省み取り組む姿勢を改めました。プロジェクトの進め方やそのテーマが持つ魅力の伝え方などにおいて「ああなりたい」と思える社会人学生を真似ることから、自分を前向きな性格へと変えていきました。
 主体的にプロジェクトに関わり自分から発言するようになると、即リアクションが返ってくる。学部では経験のないスピード感に追いつくため、私の対応力も自然と増します。PBLという授業自体が発信力を高め、プロジェクトの中盤以降は、試作のための協力企業との交渉やプロジェクト成果の対外的発表は私が担当するまでになりました。

学んだことを融合し新事業に役立てたい

 ちなみに、PBLで取り組んだプロジェクトは、「偏光を用いた多角的撮像システムの開発と応用」。このテーマは、私が学んだ電気電子工学と就職先の企業との橋渡しをすることになります。
 私が就職した会社は、自動車用ミラーの生産では国内最大シェアを誇ります。しかし、今後ミラーがカメラシステムに取って代わることは必至。その開発では、電気電子工学と光や可視化に関する技術が求められます。PBLでは、社会人学生からソフトウェア開発も学びました。それらを融合した能力を発揮し、会社の新事業に深く関わりたいと考えています。

嶋﨑 佑介さんの画像

嶋﨑 佑介さん

PROFILE
日産自動車株式会社所属

HAL東京出身
創造技術専攻 2015年修了

“なりたい自分”へ導く羅針盤

目標は明確に思い描けてもそこへの道筋が分からない

 世の中に何かを残す仕事がしたい。10代で抱いた漠然とした思いが自動車に絞られたのは、高校卒業後に入学した工科系大学でのこと。私は経営工学系の学科にいたのですが、3次元CADで自動車をデザインする他学科の演習を目にし、自分がやりたいことが具体化されました。
 とはいえ、デザインは未経験。そこで大学を辞めて専門学校に入り、スケッチなどの基本テクニックを学びました。しかし手先の技だけを高めても、不満や不安が残ります。クリエイションの現場でプロとしてデザインする“なりたい自分”は想像できても、そこに至る道筋を描けない。根本的な何かが足りないと思い入学したAIITでは、デザインに対する考え方を深化させ、技術と頭の中を結びつけることを学ぶ目的としました。

かっこよさの追求に新たな視点が加わる

 AIITの授業は1年次からグループワークが中心。世代や背景が異なる人との共同作業は新鮮でした。互いの得手不得手を認め合い、役割を分担して一つの目的を達成します。2年次のPBLもその延長にあり、私のチームは、東京五輪で活躍する小型モビリティを考えました。
 こうした授業と並行して、プロのデザイナーになるために「足りない何か」を探しました。AIITでは、自動車開発で多大な功績を残した方々が教鞭を執っています。そうした業界の重鎮に毎週作品を提出し、厳しく評してもらうことを自分に課しました。そしてこれを繰り返すなかで、かっこいいスタイルだけを追っていた自分の中に、車に乗る人の生活や喜怒哀楽などを想像する視点が加えられました。それは、デザインと社会がつながっていく思いでした。

コミュニケーション能力に自動車会社が好評価

 私はいま、自動車会社のデザインルームを職場としています。正直、就職活動でライバルとなった美大出身者と比べ、スケッチなどの技術は劣っていたと思います。しかし会社が評価してくれたのは、私のコミュニケーション能力でした。それらはAIITのグループワークで養われたもの。会社のアイデンティティとなるデザイン戦略を練る組織横断のチームに参加しているのも、異分野の人と協働できる強みが買われてのことでしょう。
 周囲から無理と言われた夢を実現できたのは、AIITがそこに至る道筋を示してくれたから。ただ、プロのデザイナーになって思うのは、想像していた「なりたい自分」の姿は、過程の一つにすぎなかったこと。いまは、さらに上の自分を目指し、日々の仕事に打ち込んでいます。

中谷 純さんの画像

中谷 純さん

PROFILE
海外市場向け電気自動車メーカー

慶應義塾大学出身
創造技術専攻 2010年修了

夢実現のために必要だった2年間

大学、専門学校を経てAIITに入学

 自動車をつくる仕事に就きたいという就職観が、運転免許を取りにわかに芽ばえました。経済学部にいて工学系に疎かった私は大学卒業後、自動車設計の専門学校に入り、構造に関する知識や工作機械の使い方、3次元CADの操作法などを身につけます。しかし、製造・設計技術の習得では飽き足らず、ものづくりの理論を求めるようになり、専門学校を中退してAIITの門を叩きました。ここで学べば、経済学部で修得した企業戦略論や産業組織論に関する知見と、専門学校で身につけた製造・設計技術を核にして、自動車開発を目指す視野の拡大を期待できたからです。

いまも仕事で用いる授業で学んだ手法

 1年次は、開発や設計に関わる技術、組み込み系システム、デザインなどを幅広く学びました。どの授業でも実践に即した理論に触れることができ、専門学校で身につけた製造スキルに確かな背景が備わっていくようでした。
 いまでも鮮明に授業内容を覚えているのは「技術経営特論」と「信頼性工学」の2科目です。「技術経営特論」では、ものづくりにおける基本設計構想の分類を実例と共に学べ、自分の目指す分野におけるものづくりの特徴を理解したうえで、今後向かうべき方向性を明確化できました。また「信頼性工学」では、身近な家電製品を例にして製品開発に伴うトラブルを未然に回避し、製品の信頼性を確保する手法を学びました。その手法は、いま自動車のシステムを設計する際に用いており、テクノロジーの追求と機能の高度化だけに陥りがちなエンジニアとしての私の視線をユーザーや市場に向けさせる気づきを与えてくれています。

1年次に学んだ理論を2年次のPBLで実践

 こうして1年次に製品開発の理論全般を学んだうえで、2年次は理論の実践として、既存にない技術をチームで開発しました。与えられたテーマは、圧力センサーの用途拡大。私たちはセンサーを敷きつめたシートにより、これを踏んだときの足裏の圧力を測定し個人を判別する認証技術を構築しました。
 AIITを修了した私は、ブレーキシステムの開発会社に就職します。リーマンショック後の就職難のとき、学部卒業後3年を経ていたことを強みとして就職活動に臨めたのは、AIITのサポートがあってのこと。そして現在は海外市場向けに電気自動車を開発・製造する会社に勤めています。工房のような少数精鋭の会社ですが、自社で一台の車をつくり上げる仕事にやり甲斐を感じています。

平尾 康幸さんの画像

平尾 康幸さん

PROFILE
ソニーモバイルコミュニケーションズ
株式会社所属

大阪大学大学院修了
創造技術専攻 2012年修了

ものづくりを俯瞰する客観的視点を獲得

経験的に得た知識の体系化を図る

 AIITで学んだ成果は、大きく2点あります。一つは、ものづくりのプロセスを学術的に学べたこと。もう一点は、設計に対する多様な視点と、設計を客観的に評価する手法を獲得したことです。
 大学で生物工学を専攻していた私は、電気製品やデジタル機器の設計や製造ついて学ぶ機会がありませんでした。プログラミングの経験も、研究用に特化したものだけ。携帯電話に組み込むソフトウェアの開発とは勝手が違います。
 ですから、開発のための知識や技術は、すべて働きながらその時々に必要な部分だけを身につけたもの。仕事に直結しているという点では実践的といえますが、体系的な知識ではなく、商品開発を俯瞰することができずにいました。そのため無駄も多く、不可欠な試行錯誤かどうかを判断する根拠も待ち合わせていませんでした。
 ものづくりをもっと洗練させ、合理的に進めるため、経験的に身につけたことを体系化したい。そう考え、仕事をこなしながら学べる場を探していました。

新規事業の企画提案にAIITの仲間と応募

 AIITで2年間学び、入学当初の目的は達成できたと思います。ものづくり――仕事においては商品開発のプロセスを論理的に理解したことで、仕様決定から要件整理、設計を経て、実装に至るまでのフェーズごとに重要ポイントを逃さず注力できるようになりました。
 また、設計については信頼性や品質を保証する手法、他の製品との類似性を検証する手法などを身につけたことで、仕事においても客観的視点を持って商品の独自性を追求できるようになりました。
 さらに、ものづくりを俯瞰できるようになった結果、ビジネスやプロダクトの企画にまで興味が広がり、社内の新規事業創出プログラムにアイデアを応募するまでになりました。それは、暗中模索の状態で仕事をしていた入学前の私では、考えられないことです。
 最終選考まで残った企画には、AIITで共に学んだ仲間も社外メンバーとして参画してもらうなど、同期生とは公私を問わない交流がいまも続いています。分野は違いますが、ものづくりに真摯に取り組む仲間と出会えたことも、AIITで手に入れた私の財産となりました。
 人だけではありません。実は修了後も私は、品川のキャンパスに頻繁に足を運んでいます。それは、AIITの図書館が持つ技術系書籍の充実したライブラリーを利用するため。つまり私にとってAIITは、入学時の目的を達成しただけにとどまらず、生涯学ぶ場になったということです。

古畑 直紀さんの画像

古畑 直紀さん

PROFILE
三菱電機株式会社 デザイン研究所所属

東京都立大学出身
創造技術専攻 2010年修了

異分野を取り込むデザインの新領域

エンジニアリングとデザインとの融合を学ぶ

 形あるものをつくる仕事に就きたい、と考えて進学したのが工学部でした。プロダクトデザイナーという職業があることを知ったのは、卒業後は就職か大学院進学かを真剣に考え始めた頃。職業観が具体化すると、専攻している学問と将来就きたい仕事との差異に気づきました。このまま専門性を高めるより、ものづくりを広く捉える視野を養おう。AIITに進学したのは、そうした思いからです。それは、自分の軸足をエンジニアリングからデザインに移すことでもありました。
 とはいえ、美大の大学院を目指さなかったのは、エンジニアとしての側面を残しておきたかったから。創造技術専攻が謳う「エンジニアリングとデザインを融合したものづくり」こそが、私が取り組みたい仕事だったのです。

ものづくりの最先端を先取りして学ぶ

 入学して実感したのは、エンジニアリングとデザインとの思考プロセスの違いでした。実現可能な技術を積み上げて結論を導くエンジニアリングに対し、デザインは過程を一端置いてゴールをまず提示します。例えば、とにかくアイデアを100個出すというような、エンジニアリングが否定する偶然性も利用し、後から実現可能なアプローチを探る。多様なアイデアを集束して結論に達しかけると、また解きほぐしてみることも。そうしたデザインシンキングやHCD(人間中心デザイン)など、当時はまだものづくりの最先端でしか聞かれなかったキーワードを先行して学べたことは、就職して以降、私の強みとなりました。
 また、板橋区と連携したPBLも貴重な経験です。プロダクトデザイナーは、異分野との協働も少なくありません。ただ異分野とはいえ、企業文化や利益追求という目的は共有しています。その点、AIITの同期生という以外は何も共有しない者同士で取り組んだPBLのプロジェクトに比べれば、相手の理解は容易。ただしそれも、AIITでデザインとともに品質工学や制御工学を学んだからかもしれません。

デザイナーとして企画から関わる

 AIIT修了後はパソコンの周辺機器メーカーに就職し、ストレージ製品やアプリのUIデザインを担当。AIITで企画から関わる面白さも知っていため、デザイナーとして新規事業にも関わりました。その後、電機メーカーに転職し、現在は公共製品のデザインを担当しています。デザインの価値をより広く社会に問う仕事の中で、エンジニアリングをはじめ異分野を取り込んだデザインという新しい領域での挑戦を続けたいと考えています。

PAGE TOP