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第11回インタビュー
情報セキュリティの最先端を走る
―発展途上の課題をテーマとするPBL―

今回のインタビュー

瀬戸洋一教授

瀬戸洋一教授
1979年、慶應義塾大学工学研究科博士前期課程修了(電気工学専攻)、㈱日立製作所入社。システム開発研究所にて、画像処理システムや情報セキュリティの研究開発に従事。セキュリティビジネスセンターセンター長、主管研究員などを歴任。2006年より現職。

情報セキュリティとはどのようなものでしょうか。

瀬戸 たとえばセキュアなシステムの開発に関心を持つ人は、暗号化技術や電子署名などが情報セキュリティであると答えるかもしれません。一方、経営管理に関心がある人は、リスクマネジメントや事業継続性、内部統制などの観点から情報セキュリティを語ることでしょう。情報セキュリティは非常に広い概念で、関わる人や立場によって、その意味はずいぶん違います。私はよくインドの「ゾウの寓話」を例に出しますが…。

どんな寓話ですか。

瀬戸 目の悪い子どもたちがゾウに触れて、その感想を述べるんです。「大きなウチワみたい」「太い柱だよ」「太くて長い棍棒のようなものだ」「大きな壷のよう」と。それぞれ、耳や脚、鼻、腹を触った感想ですね。これを聞いた先生は「みんなの言ったことは正しくもあり、間違ってもいる。ゾウという動物の一部分から全体を描こうとしても正確ではなく、ゾウはみんなの感想のすべてを合わせたもの以上の何かだ」と教えるのです。世の中のたいていのシステムもそうですし、特に情報セキュリティはこの寓話にあてはまるものです。専門特化、つまり部分知だけでは現代社会の問題に対応できませんし、情報セキュリティを語ることはできません。全体知が重要なのです。

情報セキュリティを学ぶのは、どんな学生ですか。

瀬戸 内部統制やマネジメントの観点から学びたいと考える人、IT技術の素養や経験があって、よりセキュアな設計に関心のある人、さらにはライフワークとして情報セキュリティを学びたい人など、実にさまざまです。社会人はもとより、IT系学部の新卒生も増えていますね。

瀬戸PBLの特徴を教えてください。

瀬戸 2009年度からは一貫してプライバシー影響評価(PIA)をテーマにしています。経済産業省からの委託研究やNPOからの依頼による研究をベースとしてきました。企業も含めた学外との共同研究が基本です。PIAは、いわば発展途上で、その最新の研究にPBLを通じて参加するわけです。めざす成果は、コンサルティングとソリューションの提供です。情報セキュリティの最先端を担うPBLとなっているのが、当PBLの特徴です。

次回はPBLについて詳しく伺います。

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