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PBL(Project Based Learning)型教育

本学のPBLは、数名の学生がチームとなり、1年かけてプロジェクトに取り組む中で、実社会で真に役立つコンピテンシー(業務遂行能力)を獲得するプログラムです。イノベーションに重要な問題発見力や問題提起力、問題解決力などを身につけた人材を育成するために有効な教育手法です。

AIIT PBL Method

東京都立産業技術大学院大学(AIIT)では、専門職大学院として企業が必要としている人材の育成に取り組んでいます。通常、ほとんどの仕事がプロジェクトで行われており、企業としてはプロジェクトで仕事をするスキルを身につけることが求められます。また、仕事で直面する問題はとても複雑で正解が無い場合もあります。そのような問題に対して広く横断的な視野で問題解決できるスキルとコンピテンシー(業務遂行能力)を身につけるためAIITではPBL(Project Based Learning)型教育を導入しています。

PBL型教育とは、実社会で即戦力として活躍できる人材を育成するために有効な教育手法であり、数名の学生が、明確な目標を掲げ、できるだけ実際の業務の内容に近い1つのプロジェクトを完成させていくプロセスの中で、実社会で真に役立つスキルやノウハウを修得していくというものです。通常の研究型の大学院では、修了要件として論文作成を課す例が多いですが、PBL型教育は、複数人のチームとしての取組みであること、成果物だけでなく、プロセスにおける活動も評価の対象とすること、具体的なプロジェクトの成果発表となることなど、大きく異なります。本学では、コンピテンシー(業務遂行能力)を実践的に身につけるため、1年次に基礎的な知識、スキルを修得したうえで、主に2年次にPBL型教育を実施しており、修了に欠かせない要件としています。本学ではこのようなPBL型教育における方法論をAIIT PBL Methodと呼んでいます。なお、本HPに掲載しているAIIT PBL Methodは過年度の実績をもとに作成されたものです。

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AIIT PBLの特徴

  • 大学院レベルの質・量
    • 修士論文に代わる修士号を取得するための必修科目
      → 実務レベルのプロジェクトの規模・内容
  • 経験の蓄積・業務遂行能力の修得
    • 1年次: 知識・スキルの修得
    • 2年次: コンピテンシーの修得(2年次のほとんどを費やす)
  • PBLの構成メンバー
    • 通常の業務同様、複数のメンバーによる構成
    • メンバーの多様性(年齢・職業・職位・経験等)
  • AIIT PBL独自のメソッド
    • プロジェクト計画、スケジュール管理、品質評価・保証、達成度評価、スクラム、リーン等
    • PBL規則および枠組みの下で、担当教員が各プロジェクトの内容を設定する

AIIT PBLは全世界的に見ても画期的な試みとなります。

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PBLがAIITの学位プログラムの中核

AIITでは通常の研究型大学院では必要とされる修士論文は課しません。その代わり2年次の1年間がPBLに費やされます。よって、PBLには大学院レベルの質と量が要求されます。AIITは専門職大学院であり、プロフェッショナルとして産業界で活躍する高度専門職技術者を育成します。通常の研究型大学院では修士論文をもって高度な専門的知識が獲得できたかどうかを判定しますが、AIITではPBLの活動をもって高度な業務遂行能力が獲得できたかを判定します。

AIIT PBLのテーマはどれも実践的であり、テーマを適切に選べば比較的大きな規模のプロジェクトも実施することができます。実務レベルの内容・規模のプロジェクトを1年間かけて実施することにより、高度専門職技術者に必須の知識・スキル・ノウハウを獲得していきます。

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AIIT PBLの教育プログラム

AIIT PBLは、本学教育課程の最終年度に必修科目として開講されるもので、通常の大学院の修士論文に相当するプログラムです。すなわち、本学では学位取得の要件として修士論文を課す代わりにPBL型教育を実施するというわけです。AIIT PBLは修了要件40単位中12単位(前期6単位、後期6単位)を占める本学の最も特徴的な重要履修科目となっています。

本学は4学期制(クォータ制)を採用し、1年次には4サイクルで各種基礎・専門科目を学修することにより、知識・スキルを修得します。そして2年次に前期・後期の2サイクルに分けて1年間かけてPBLを実施します。実社会で直面するさまざまな問題は従来の大学院教育で実施されてきた体系的な知識の修得だけで解決できるほど単純ではありません。むしろ従来の知識だけではその本質を理解することすら困難な複雑性を持っています。本学では、このような現実の問題を解決できる人材を育成するために、PBL型教育を導入しました。それにより、知識・スキルを活用した実践的な業務遂行能力を獲得できるようにしています。

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AIIT PBLでは、体系的な知識・スキルと、業務遂行に必要な実践力を身に着けることが目標となっています。本学では、この学生がPBLにおいて獲得すべき業務遂行能力をコンピテンシーとして定義しています。コンピテンシーは3つのコース共通のメタコンピテンシーと各コースが設定するコアコンピテンシーで構成されています。

  • メタコンピテンシー
    • コミュニケーション能力
    • 継続的学修と研究の能力
    • チーム活動
  • 『事業設計工学コース』コアコンピテンシー
    • 問題解決力
      新統合力、環境分析力、事業構築力
    • 知識獲得力
      情報収集力、技術分析力、活用力
    • マネジメント能力
      開発力、管理力、リーダーシップ力
    • 総合的企画力
      将来像構築力、シナリオ構築力、ネットワーク構築力
  • 『情報アーキテクチャコース』コアコンピテンシー
    • 革新的概念、アイデアの発想力
    • 社会的視点及びマーケット的視点
    • ニーズ分析力
    • モデリングとシステム提案
    • マネジメント能力
    • ネゴシエーション力
    • ドキュメンテーション力
  • 『創造技術コース』コアコンピテンシー
    • 発想力
      企画提案力、要求定義力、独創力
    • 表現力
      プレゼンテーション力、言語可視化力、非言語可視化力
    • 設計力
      機能デザイン力、感性デザイン力、機能と感性の統合力
    • 開発力
      開発準備力、実装力、試験・評価力
    • 分析力
      ユーザビリティ評価力、マーケットリサーチ力、業務行程分析力

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プロジェクトと教育目標

プロジェクトでは課題に対して様々なアクティビティを実施し解決していきます。その結果としてプロジェクトの成果物が得られます。PBLではこの一連のプロジェクトを実施していく過程で学んでいく教育方法になります。PBLを実施することにより、課題解決のための方法論(アクティビティ)を学ぶことで、今までできなかったことや知らなかったことなどが、できるようになる、他の問題に対しても応用できるようになるということがPBLの教育目標となります。

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PBLを通じて学べること

  • プロジェクト課題を解決するために(アクティビティを実施するために)知識の応用・適用のしかたを学ぶ
    • 答えを教えてもらうのではなく、自分で考える(気づき)
  • 方法論を学ぶ(似た問題に対し、繰り返し適用できる)
    • (設計、デザイン業務の特質):いろいろな制約、価値観、トレードオフ判断
  • 自分の役割を果たすために必要な知識で知らないものを自主的に学習する
    • 継続的な学修の能力を養う
  • 多様な視点、価値観、見方により、ひとりで考えるより、より良いものを目指す
    • 多様性の理解
  • (複数メンバーによる)プロジェクトの遂行方法・管理方法を学ぶ
    • チーム(チームメンバー)としての活動 プロジェクト管理
  • ”サービス”で必要なことを学ぶ
    • 「期待」の正しい把握

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マネージメントシステム

PBLのテーマ設定においては、AIITに設置している運営諮問会議のメンバー企業から学外委員を招き、この学外委員とAIIT教員による学内委員から構成されるPBL検討部会を設置することで産業界の声を取り入れるようにしています。この委員会では学外委員が考える現実の課題を議論し、それを元にAIITの教員がテーマ案を本委員会に提案します。そして、そのテーマについて学外委員の意見を取り入れて翌年度に実施するPBLテーマを決定するという方法を導入しています。

PBLのテーマ設定を担当教員だけで実施すると、その教員が現在実施している研究分野だけに集中してしまい、深いが視野が狭くなりがちなテーマ設定に陥るという問題点を排除できるようにしています。また、AIIT PBLでは外部評価委員制度を取り入れ、実施しているPBLテーマに関連する専門家を招き定期的にPBL活動のレビューをしてもらっています。

  • PBL運営の仕組み

    PBL運営の仕組み

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PBLの活動

AIIT PBLは前期・後期合わせて12単位の必修科目となっています。そのため原則として週に9時間(授業時間6コマ分)のチーム活動と9時間の時間外作業を30週間継続することが求められます。時間外においては、チーム活動のために必要な知識の事前学習や、メンバーに分担された活動中の課題の調査などを行います。これにより原則として1週間の活動時間は18時間になります。AIIT PBLではその時間に見合った成果物が求められることになります。

学生がPBLを実施していくにあたって、まずプロジェクト計画書を作成します。これにより1週間の活動目安である18時間をどのように使ってどのようなプロジェクトを進めていくかを計画します。PBL実施期間中はこの計画に基づきプロジェクト活動を行います。プロジェクトの活動はAIIT PBLサポートシステムを利用して報告・提出します。これらを全教員で共有することにより各学生個人の活動を把握できるようにしています。

  • PBLの活動報告
    • プロジェクト活動の内容はすべて記録し、Backlogに入力する
    • 個人活動の記録として週報をLMS (Learning Management System)上に提出する
    • 各クォーター終了時のタイミングでセルフアセスメントをLMS上に提出する
    • 前期と後期の終了時にはプロジェクト活動報告を提出する
    • 後期終了時には年間活動報告を提出する(外部に公開)

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PBLの年間スケジュール

AIIT PBLは、研究型大学院の修士論文に相当し、2年生は1年間かけて1つのプロジェクトに取組みます。PBLの活動は1年次の1月からチーム配属のための準備が始まり、4月から本格的に活動が始まります。途中、中間成果発表会を実施します。また2月には一般公開の形で最終成果発表会を学外の会場で実施します。

年間スケジュール

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チーム構成と指導体制

AIIT PBLでは通常の業務同様、複数のメンバーによるチーム構成になっています。しかし、そのメンバーは多様性に富んでおり、年齢、職業、職位、経験等がさまざまな学生によって構成されています。このような構成の中でPBLを実施していくことは難しい反面、同じような知識・経験を持ったメンバーで構成された通常の業務では得られないような新たな学びが得られることが期待できます。

学生は1チームあたり5名程度の学生で構成されます。AIIT PBLのチーム活動においては、学生はプロジェクトの一員として活躍できることを示します。チームメンバーは共通の目標を持ち、チーム内で各自の役割を果すことで、チームとして成果をあげていきます。その課題解決の過程で学んでいくのです。また、前述のようにチームメンバーの多様性からチームの他のメンバーからも多くのことを学ぶことができます。

教員は1つのチームに対して主担当教員1名と副担当教員2名を配置する指導体制で実施します。担当教員はチーム全体に対してプロジェクトの進め方を指導するとともに、学生の活動と成果を把握し、その結果を元に学生個人に対して指導と評価を行います。チーム学修においては、個々のチームメンバーの個人評価が難しくなりますが、3名の教員で、できるだけ客観的に成績評価できるような体制と評価システムを導入しています。

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週報とセルフアセスメント

学生は1週間の活動と成果の実績について週報で報告します。週報ではチーム活動だけでなく、時間外に行った作業もすべて報告します。週報は主に学生個人の活動内容や活動の量の把握のために利用します。また、週報による活動と成果の記録に基づき、学びを省察するためのものとして年4回セルフアセスメントを提出します。クォーター終了時にプロジェクト活動を振り返り、できるようになったことや獲得したコンピテンシー等を記述します。セルフアセスメントは主に定性的な評価(活動の質の評価)に利用します。

週報の項目 週報の内容と注意事項
今週の活動と成果の実績 今週の自分の活動と、その結果でできた成果物の状況を記述する成果物は必ず作成し、他のメンバーと教員が参照できるようにする
来週の活動と成果の予定 次週の活動の目標と期待される成果物について、計画に記述する
課題と解決策 今週発生した課題と、今週解決した課題およびその解決策を記述する
出来事・気づき プロジェクト全体で、印象に残る出来事や、自分の気づきについて記述する
特記事項 その他特に報告することや、他のメンバー・教員への要望事項などを記述する

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AIIT PBLサポートシステム

  • Backlog
    PBLのプロジェクトとファイル管理のサイト
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  • LMS(manaba)
    活動報告の提出および教員間の共有のサイト
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PBLの成績評価システム

  • 何を評価するか
    AIIT PBLでは、プロジェクトの成否ではなく各学生個人を評価します。その学生がPBL活動に貢献しているかどうかの評価と、どの程度コンピテンシーを獲得したかの評価により学生個人の成績を評価します。前者は普段のPBL活動への参加度および作成した成果物の量および質を評価し、後者はPBL活動で獲得したコンピテンシーが専門職修士レベルかどうかを評価します。1年間のPBLを通して何を学んだか、どれだけ成長したかが評価のポイントになります。
  • 誰が評価するか
    評価にあたっては、すべての専任教員の参加によるPBL成績判定会議を年4回開催しています。PBLを履修しているすべての学生に対して、3名の担当教員(主担当教員1名、副担当教員2名)が成績評価の原案を作成し、PBL成績判定会議にてすべての専任教員で審議します。評価の客観性と適切さを担保するためPBLの評価ではこのような工夫を行っています。また、外部評価委員が月例レビューやプロジェクト成果発表会等に参加した際の意見も評価の参考にしています。
  • 評価方法
    • PBL活動と成果物の質と量の評価
      成果物や学生からの申告(週報・セルフアセスメント)により、以下のPBL評価マトリクスにて評価を行います。これによりPBL活動にかけた時間と、かけた時間に見合った成果物が作成されているかを評価します。
      PBL評価マトリクス 質評価 量評価
      PBL活動 プロジェクト管理、役割・貢献等 活動時間、遅刻・欠席等
      PBL成果物 ドキュメント、ソフトウェア・ハードウェア、論文等の質

      基準を満足する成果物の量

    • コンピテンシー獲得度の評価
      メタコンピテンシーおよび各専攻で設定しているコアコンピテンシーに対し、下表のようにコンピテンシーのスキルレベルを5段階で明確に定義しています。そのスキルレベルを評価基準として学生が獲得したコンピテンシーの獲得度を評価しています。
      メタコンピテンシー スキルレベル(一部抜粋)
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PBLテーマ事例

令和3(2021)年から令和5(2023)年までのPBLテーマをコース別に紹介します。

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