第148回コラム 「我が家の米騒動」
2024年10月23日
佐藤 里恵 助教
今夏、平成の米騒動(1993-1994年)以来、約31年振りにお米が安定して購入できない状況が発生しました。
我が家のお米は、約13年間、同じ通販サイトから購入しています。
自宅にあるお米が5kgを切るとポイントの付与率が高い日に10kg(5kg×2)購入するというサイクルで同じ銘柄を安定した価格で購入していましたが、本年3月下旬、突然、品切れが続くようになりました。
新米が店頭に並び始める前の8月に品切れになったことはありましたが、3月に品切れが続くことは初めての経験で悩みましたが、我が家には備蓄が無いため、価格は高くなりますが別の銘柄米を購入することにしました。
銘柄が変わり困ったことは、水加減でした。我が家の炊飯器にはご飯の固さを設定する機能が付いており、今までと同じ条件で炊飯しましたが、銘柄によって炊き上がりのご飯が柔らかくなったり、固くなったりと安定せず、銘柄に合わせた水量の調整が必要になりました。
アイリスオーヤマ(株)からお米の銘柄に合わせて炊飯する炊飯器[1]が販売されていたことを思い出し、「銘柄によってお米の水分量が異なるということ?」と気になり調べてみたところ、玄米は規格水分値14.5-15.0%になるよう乾燥[2]されており、同時期に精米した場合、銘柄に関係無くほぼ同じ水分量であることが分かりました。そうなると銘柄によって適切な水量が異なる要因が他にあることになります。
アイリスオーヤマ(株)のサイトにはお米の重量に応じて水量を設定する”量り炊き”という機能を付加した炊飯器[3]が販売されており、”量り炊き”という機能は、お米の重量と銘柄に合わせて最適な水量を調整する旨[4]が記されていました。
自宅で炊飯する際、お米は計量カップを用いて1合ずつ体積で測っており、お米の粒度によって重量が変わることに合点すると共に、私の測り方では、どの程度の誤差が生じているのか知りたくなりました。自宅にある料理用のデジタルスケール[5]を用い、1合=180ml=150gであることを利用して1合ずつ5回(計5合分)測ったところ、表1の結果が得られました。

表1 銘柄別計量結果
正確な粒度は測れませんでしたが、他の品種と比較して1粒あたりの重量が約0.005g小さい値を示した品種を5合計量した場合、最大値+58gの誤差が生じており、お米150gあたり200mlの水量が必要なことから計算すると約77mlの水量が不足していたことが分かります。加えて、私は1合あたり約7g多目にお米を計量する傾向にあることが分かりました。そこで、現在使用している炊飯器を用いて適切な水量でお米を炊くための簡便な方法を考えました。
① キッチンスケールの上に炊飯釜を置き、目盛を”0”セット
② 合数×150gのお米を炊飯釜に入れる
③ お米を洗った後、キッチンスケールに戻し、合数×350g*1,2になるまで水を入れる
*1 視差による目盛の読み取り誤差を排除するため水量は重量で計測することとする
*2 お米は精白米、ご飯の固さは普通を想定、1合(=150g)あたり200ml(=200g)の水量で計算
上記の方法では、精米後の乾燥度合による誤差は考慮しておらず、水分計[6]を用いて米の水分量を測定することで、適切な水量の精度は更に向上すると考えます。しかし、手順が増えることは家事負担が増えることに繋がり、現実的では無いと考えました。
また、ご飯の固さは個人によって感覚や好みが異なり、ご家庭によって炊飯時に氷を入れるなどの工夫もあることから、誤差=家庭の味なのだと私は理解しました。
最後に、先日、実家に呼ばれ、久し振りに母が炊いたご飯を食べたところ、とても美味しくて、普段の倍の量を食べてしまいました。帰り際、私が絶賛したお米を母が持たせてくれたので、翌日、自宅で炊飯したところ、同じ味にならず、「この差は何なの?」と炊飯の奥深さを感じると共に、「ご飯は炊きたてが1番美味しいのよ」と言いながら、毎食、家族の食事時間に合わせて炊飯してくれていた母の愛情に改めて感謝した我が家の米騒動でした。
[1] アイリスオーヤマ(株) 銘柄炊き
https://www.irisohyama.co.jp/okome-kaden/rc-ma30/ (visited on 2024-10-6)
[2] 農林水産省 乾燥・調整-(1)適期刈取りと収穫作業の計画化
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/04190303suitou1c.pdf
(visited on 2024-10-6)
[3] アイリスオーヤマ(株) 圧力IH 銘柄量り炊き
https://www.irisohyama.co.jp/okome-kaden/krc-pc50/ (visited on 2024-10-6)
[4] アイリスオーヤマ(株) なるほど銘柄量り炊きIHジャー炊飯器
https://www.irisohyama.co.jp/products/naruhodo/krc-id30-r.html (visited on 2024-10-6)
[5] TANITA デジタルクッキングスケールKJ-212
https://www.tanita.co.jp/product/scaleforkitchen/3457/ (visited on 2024-10-6)
[6] (株)ケツト科学研究所 米麦水分計 PB-R 「Grenza」
https://www.kett.co.jp/products/pb-r/ (visited on 2024-10-6)