第135回コラム「アップサイクルって何?」
2021年10月1日
越水 重臣 教授
昨年度、越水PBL(Project Based Learning)では「アップサイクル」をテーマに1年間のプロジェクトを行いました。ところで、皆さんはアップサイクルをご存じでしょうか?リサイクルという言葉は、よく耳にすると思うのですが、アップサイクルは知らないという人が少なくありません。実際に、我々のプロジェクトチーム(以下、越水PTと呼ぶ)がアップサイクルに関するアンケートを実施したところ、リサイクルを知っていると答えた人が全体の98.0%であったのに対して、アップサイクルを知っている人は同45.7 %に留まりました。まだまだアップサイクルの認知度は低いようです。
さて、肝心のアップサイクルとは何?という話に戻します。アップサイクルは、クリエイティブ・リユース(創造的再利用)とも言われる概念で、その発祥はドイツになります。リサイクルの仕組みの限界を超えて、価値を高めることをアップサイクルと呼んでいます。
・リサイクル:回収された資源を再び同等の素材に生まれ変わらせること
・アップサイクル:役割を終えて使われなくなった製品や素材を使って、別次元の価値ある製品に作り変えること
ちなみに、リサイクルはごみを減らす重要な活動なのですが、例えば再生紙など、元の素材よりも品質が落ちることが一般的なので「ダウンサイクル」とも呼ばれています。それに対して、アップサイクルは価値を高める創造的な活動でありながら、環境にも優しいということがポイントです。
ここでは、アップサイクルのわかりやすい事例を1つ紹介して、皆さんのアップサイクルに対するイメージを膨らめていただこうと思います。
今回、紹介するのは、アップサイクルプロジェクト開始のきっかけにもなったドキュメンタリー映画、『旅するダンボール』に登場するダンボールアーティストの島津冬樹さんの事例です。
ダンボールをこよなく愛する島津さんは、世界30か国を巡り、街角に捨てられているダンボールを拾い集めては、デザイン性と機能性を兼ね備えた「ダンボール財布」に生まれ変わらせます。さらに映画の中では、ダンボールが導く人との交流が心温まるストーリーで展開されていきます。
図1に島津さんが作ったダンボール財布を示します。廃棄されたダンボールは「ものを梱包する」という役割は終えているかもしれませんが、「強度があるのに軽く、柔軟で加工しやすい、しかも暖かみがある」といった特性は残存しています。その特性を生かして、ダンボール財布という全く別次元の価値を持った製品を生み出している、まさにアップサイクルなのです。
ちなみに、昨年度に越水PTが行った、ダンボールアーティストの島津さんへのインタビュー詳細は、末尾の参考サイト[2]に掲載されていますので、そちらもお目通しいただけますと幸いです。
島津さんのインタビューの中で次の言葉がとても印象に残っています。『自分自身、実は“環境に優しい”ということはあまり意識していませんでした。まず“ダンボールが好き”ということが前提にあって、あとから“アップサイクル”という言葉が付いてきました。入り口が楽しいということが重要で、エコを押し付けないことを大切にしています。』
無理せず続ける、楽しく環境問題に取り組む・・・そこにサステナブルな社会を実現するための糸口がありそうですね。皆さんも(コロナで増えたおうち時間を使って)アップサイクルを楽しんでみませんか?
このコラムを読んでいただき、ありがとうございました。アップサイクルに興味を持たれた方は以下のサイトを訪問してみてください。IDEAS FOR GOODというサステナブル界隈では有名なサイトなのですが、越水PTのメンバーが執筆した記事が掲載されています。また、越水PBL2020の活動内容は、今年度の本学紀要に掲載予定です。こちらもぜひご一読をお願いいたします。
参考サイト(越水PTメンバーが執筆しています)
[1] アップサイクルの定義:
IDEAS FOR GOOD:用語集
https://ideasforgood.jp/glossary/upcycle/
[2] アップサイクルの事例①
IDEAS FOR GOOD:不要なものに価値を.旅するダンボールアーティストが伝えたいこと
https://ideasforgood.jp/2020/12/10/toritsusangyo-uni-01/
[3] アップサイクルの事例②
IDEAS FOR GOOD:孤立化していく地域コミュニティに挑む,ランドセルのアップサイクル「ゆずりばいちかわ」
https://ideasforgood.jp/2021/03/06/yuzuriba/
[4] アップサイクルの事例③
IDEAS FOR GOOD:廃棄自転車を「てんとう虫図書館」に変えた、中国のアップサイクル