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島田晴雄理事長 挨拶

島田晴雄理事長

 皆さん、入学おめでとうございます。ご家族、関係者の方々にも心からお祝い申し上げます。私は公立大学法人首都大学東京の理事長という立場から祝辞を申し上げたいと思います。

 今日入学なさいました皆様は、既に色々な経験を持った社会人の方々ですけれども、更に新たな人生に向けて挑戦をするということで、恐らく大きな期待と緊張感を持ってるのではないかな、という風に思います。この産業技術大学院大学「Advanced Institute of Industrial Technology」という名前ですが、本学は皆さんの人生の革新を、最良の環境とコンテンツを提供することでお手伝いをしたいと思っています。

 今の世界は、先ほど学長もおっしゃったことですが激しい技術革新の時代です。今、第四次産業革命と言われています。第一次産業革命はご存知のように、200年くらい前ですが、蒸気機関でした。第二次産業革命は電気やモーター、内面機関。第三次産業革命は戦後のITと言われるわけですが、第四次産業革命は今学長が詳しくおっしゃられましたけど、IoT(インターネットオブシングス)とか、AIとか、ビッグデータとか、ロボットとか、今学長が大変力を入れておっしゃったのはブロックチェーン、これらは世界の経済も社会も人間生活も根底から変える、そういう可能性を持っている技術改革の時代です。

 しかし一方、私どもの人間社会は、どんどんと高齢化が進んでおり、皆さんの時代は間違いなく人生80年の時代だと思います。80年の人生を生き抜いていくのに、20代の前半で習ったことを使ってずっと生きていられるかと言うと、多分不可能です。恐らく人生のうちに2度とか場合によっては3度とか、新しい技術を身に付けて自己革新をしないと生きていけない。そういう時代に皆さんは直面しています。そういう時代にどう取り組むかということですが、本学は、22歳以上の実務経験のある方に、2年間非常に高度な、密度の高い効果的なプログラムを提供して参りたいと思います。先ほども学長がおっしゃられましたが、産業技術という意味では唯一の産業技術に特化した専門職大学院です。

 皆さんのうち、半分強の方は情報アーキテクチャ専攻に所属して、IoTとか、人工知能とか、あるいはサイバーセキュリティとかそういう問題について、すぐ勉強に入るかと思うのですが、もう一つは創造技術専攻、こちらは感性デザイン、感じるデザイン、あるいは機能デザイン、工業デザイン、それからやはりITを使ったデジタルデザインですね、こういうものも学びます。そういうことをしっかり指導してくださる素晴らしい教授陣がここにずらっとおられますが、実務経験が大変豊富で、現実務家である先生もいらっしゃいます。そして研究設備、環境も素晴らしいものがあります。それから国内でもそうですが、国際的なネットワークも大変見事に構築しておられます。

 そこで先ほど学長がおっしゃいましたが、PBL(Project Based Learning)、これはもう、本学が日本で一番進んでいると言えると思います。それからクォーター制の集中学修。これはクォーターですから2か月くらいでマスターしますので、大変やりがいのある学修システムです。日本の大学、大学院でクォーター制を取っているところはそう多くはありません。それから先生方と対面して勉強するのと同時に、ITを使って、録画を使ってその講義を学んでいく、そういう学び方も大変発達しているわけです。

 皆さんは、一応情報アーキテクチャと創造技術とに専攻が分かれておりますが、恐らく今一番求められている「デザイン」というのは、車のデザイン、電車のデザイン、といった古い考え方のものから、社会システム、目に見えないシステムそのものの構想まで、全部がデザインなんですね。それらはほとんどITを使わないとこなせない世の中になっているので、おそらく両専攻の皆さん、相互に切磋琢磨しあって、新しいものを構築されていくのだろうと思います。

 特にこの大学はPBLが進んでいますが、世の中で仕事をするということはどういうことか考えてみますと、たった一人で仕事をするということはほとんどできません。音楽家ですらいろんな人のサポートが必要です。もちろん企業の中で仕事をすると言うとどうしても多くの方々と一緒になって、チームを作ってやらなければいけない。そうすると技術も重要ですけど、戦略的な思考、コミュニケーション、いろんなものを総合しなければなりません。そういった人間力をPBLで皆さん学んでいくのだと思います。

 そして今日も中国からの留学生の方がたくさんいらっしゃるし、留学生でない方も外国籍の方もいるわけですが、本学は国際活動が大変盛んです。特に東南アジアの諸国と密接な連携をしながらいろいろなプロジェクトを展開しています。東南アジアはご承知だと思いますけど、40年前までは戦争に次ぐ戦争で大変な地域でした。皆さん聞かれたことはあると思いますけど、ポル・ポトとか、あるいはパテート・ラーオとか、一番やっぱりひどかったのはベトナム戦争だと思います。ベトナム戦争はベトナムとアメリカの戦争に留まらず、ラオスの山の中まで焼き払われてますから、そういうずっと続いた、休むことなく戦争でした。ところがベトナム戦争が終わって、初めて平和になった、静かになった。今、東南アジアに行かれたらもう、ものすごい皆さん喜んで仕事をされていますよ。東南アジア全部貫通するハイウエイがたくさんできて、一昨年の暮れには、とうとうヨーロッパを見習ったのだと思いますが、ASEAN Economic Communityを作りました。その方々が一番身に付けたいのは、まさに皆さんがやられるようなPBLに基づいた総合的な技術、それからチーム研究、社会、新しいことを実現する研究です。ですから非常に熱い視線が注がれています。そういう状況の中で、皆さんはこれから2年間、思い切って勉強していただきたいと思います。

 きっと皆さん大変貴重なものをつかんで卒業されると思うのですが、先ほど学長がおっしゃられましたけど、これまで千人近い卒業生の方がいらっしゃいます。その中で、皆さんの今までのキャリアをアップする、あるいはキャリアを変えてみる、そういうことをなさるわけです。既にもう50何人の方が、この学校で学んで会社を興して事業を興されています。スタートアップと言いますね。そのスタートアップをなさった「社長会」がありますが、そんな大変貴重なものを持っておられますので、皆さん、思い切って精一杯勉強してください。そして今日お集まりの皆さんは大変多様です。年齢も違う、職業も違う、性別も違う、国籍も違う。そういう人たちがプロジェクトで一生懸命やるということは、これはもうミニ世界そのものです。そういう中で同じ釜の飯を食ったとなれば、人生無二の親友ができると思います。この皆さんが一緒に学んで作った人脈というのは、人生の、実は最高の宝です。そういう場をも私共は提供しようと思います。

 それでは皆さん思い切って若い力で自己学習して、世界に貢献していただきたいと思います。

 今日は誠におめでとうございます。

 平成29年4月1日
公立大学法人首都大学東京 理事長 島田晴雄

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