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川淵三郎理事長 挨拶

川淵三郎理事長

 学位記を授与されたみなさん、本日は誠におめでとうございます。
 去年もこの席で申し上げたのですが、みなさん、非常に達成感と満足感に満ちて、学位記を学長から受け取っておりました。なぜだろうと自分の立場で考えたときに、仕事が終わった後、或いは土曜日、もう行きたくないなと、そういう葛藤を全部克服しながら、今日の日を迎えたという意味での達成感かという風に思っています。勉強が好きで好きで、大学院に行きたくてしょうがないという人も何人かはいるかもしれませんが、全員がそうとは、なかなか、それがみなさんのうれしい顔に表れているのかなと思います。
 先ほど学長が3月で退任されるというお話をされましたけれども、石島学長のおかげでこの産業技術大学院大学が大きく発展してきたことに対して、その貢献度に心から厚く御礼を申し上げます。どうも、ありがとうございました。
 囲碁の話、私もするつもりだったので、ちょっと私のストーリーが崩れてしまったのですが。
 実はですね、20年後には、今の人間が働く仕事量の半分がAI或いは機械に代わってしまうだろう言われております。そういった中でショックだったのが、今回、AIが囲碁の世界一の韓国の棋士に4勝1敗で完勝したということです。なぜ私がショックかというと、コンピュータの今の能力においては、学習効果の中で学んでいくことができると聞いて、本当にショックでした。

 ある学者が新聞で言っていましたけれども、仕事を英語で言うと、3つに変化しているということです。仕事は英語で、taskなどいろいろな言い方がありますけれども、一番初めの英語はlaborであるということです。これは肉体労働ですよね。それが産業革命で、workに変わったわけです。今現在の時代がworkです。そして今後は情報革命が行われ、playになるだろうと言われているのです。英語のlaborやwork、playが世界的に認められた言葉かどうかは知りません。しかし、ここでは、playとは、人間しかできない仕事のことを意味していると言っているわけです。ここにいらっしゃるみなさんは、少なくともあと20~30年、40年といろいろな仕事に就かれるでしょう。その間に、間違いなく仕事量というのは減っていきます。そういうことにどう対処していくのか、それが、学長が言われたコミュニケーション能力その他、様々な能力を身に着けている人が最後に勝ち残っていくということだと思います。そして、物事の本質を見抜く力、そして他人と友好な協力関係を気づく力、こういった力を持っていれば、変化に対応していけると思います。
 人間の仕事が減っていくということは、時間的な余裕が出てくるということですよね。会社に縛られる時間というのは減っていき、もちろんそこには貧富の差がもっと広がっていくと思いますけれども、みなさんが人間としてエンジョイする時間、スポーツを楽しみ、芸術・美術など、いろいろなものを人間としてエンジョイする時間が、増えていくことは間違いないと思います。
 僕はもうそういった時代にはいないと思いますけれども、そういった余裕ができたときにも十分に対応していける人間力、学長が言われた能力をしっかり持っていれさえすれば、これからの時代を乗り越えていけるだろうという風に思います。そういった能力を常に念頭に置いて、生活をエンジョイしてもらいたいと思います。
 今日は学位記の授与、誠におめでとうございます。

 平成28年3月19日
公立大学法人首都大学東京 理事長 川淵 三郎

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