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教員連載コラム

不確かな未来との対話

  • 102回コラム

    ビデオゲームとVR

    情報アーキテクチャ専攻 飛田 博章 准教授

 グラフィックボードやディスプレイの性能が画期的に向上したことにより、ビデオゲームを楽しむ環境が充実している。グラフィックスボードによりリアルで複雑な視覚効果をスムーズに表示することができ、大画面の4KモニターやHMDによりゲーム空間に入り込む没入感が得られる。また、古いビデオゲームとゲーム機をパッケージ化して販売する動きもある。古いゲームの中には、限られた制約の中で面白さを探求した名作も多い。
 こうしたゲーム環境を拡張する研究もこれまで数多く紹介されてきた。特に、スクリーンを拡張するアプローチは拡張現実 (AR) や仮想現実 (VR) の研究で数多く見られる。部屋全体を仮想空間にすることで没入感を演出するVRシステムや、机や壁を対話可能な表面として拡張したARシステムがある。映像に加え、システムを使うユーザが情報とどのように対話するかといったインタラクション手法も重要になる。こうしたARやVRのシステムをビデオゲームに拡張したシステムも研究されている。また、カメラをはじめとした様々なセンサーと組み合わせることで、メディアアートを実現する手法としても使われている。
 マイクロソフトリサーチのIllumiRoomは、TVスクリーンの周りに映像を投影することで、画面を映像がはみ出すような視覚効果によりビデオゲームを拡張するシステムである。このシステムでは、ステレオカメラによりテレビ画面及び周辺の凹凸を認識し、プロジェクターによりテレビ画面周辺に映像を投影することで効果な視覚効果を提供する。しかし、カメラとプロジェクターは固定されているため、認識と投影対象は特定の方向のみに限定されてしまう。そこで、IllumiRoomを部屋全体に拡張したRoomAliveでは、複数のプロジェクターとステレオカメラのユニットを天井に取り付け部屋の壁を全て投影対象とした。IllumiRoom や RoomAlive のアプローチも、大型プロジェクターを複数台天井に設置するため、家庭のリビングに装置を配置し使うのは容易ではない。しかし、プロジェクターの小型化やカメラの高性能化により、近い将来こうした研究が一般に使われることは難しいことではない。
 一方で、バッテリーを搭載した携帯型プロジェクターを使ったARシステムも紹介されている。システム全体が小型で軽量であることから、手で持ちながら操作する対話手法が可能になる。また、プロジェクターにカメラを組み合わせることで、ARマーカーや投影面を認識することも可能になる。懐中電灯のようにプロジェクションシステムを操作しながら、各種認識と組み合わせることでこれまでにないゲームも可能になる。小型プロジェクターを使うことで手軽な装置が実装できる反面、既存のARシステムとは異なる制約もある。しかし、プロジェクターと一体化したスマートフォンの存在など、こちらも新しいゲームやコミュニケーションを実現する可能性を秘めている。
 2018年度はこうしたARやVRをテーマにした国際会議が日本で数多く開催される。ACM VRST (Virtual Reality Software and Technology) はその名の通りVRやARの技術に焦点を当てた学会であり、ACM ISS(Interactive Surfaces and Spaces) もVRのソフトウェアやハードウェアに関する様々な発表がある。さらに、ACM Siggraph Asiaは本家Siggraphのアジア開催版で、コンピュータグラフィックスに関する最新の技術を知ることができる。プレゼンテーションによる口頭発表だけでなく、デモセッションでは実際のシステムに触れることもできる。特に、SiggraphのEmerging Technologyセッションは、デモンストレーションを通じて最先端の技術を知る絶好の機会といえる。

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