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産技大で学ぶ。

修了生たちのキャリアデザイン
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キャリアアップ 30代
  • 大類 優子さん
  • 小杉 晋央さん
  • 松井 徳子さん
  • 渡辺 慎太郎さん
大類 優子さん

大類 優子さん

PROFILE

アシックスジャパン株式会社所属 大阪大学大学院出身 情報アーキテクチャ専攻 2010年修了

修了後に再発見したPBLの価値 システムの規模が拡大し求められる広範なIT知識

 仕事を通して身につけたITの知識を整理し、体系的に定着させよう。そう考えるようになったのは、社会に出て10年が過ぎた頃でした。そこまでにERPやウェブシステムの導入に携わり、PMの経験も積みました。ただ、キャリアを重ねるにつれ任されるシステムの規模が大きくなり、それまで以上にITの世界を俯瞰する視野と広範な知識を修得する新たな学びの機会が必要と感じていました。
 また、主要なプロジェクトを終えると仕事環境を一新したくなり、転職を重ねること4社。ひとまず腰を落ち着けるにあたり、大学院へ通えば修了までは辞めないだろうという目論見もありました。こうした目的を、できるだけ経済的負担を軽くして達成するため、公立であるAIITを学びの場として選びました。

多忙でも学び続けるため通学の日々を記録したブログ

 仕事をしながらの通学は、想像していた以上に激務でした。というのも、入学と前後して出張が急増。1ヵ月の出張日数が20日に達した時期もありました。それでも2年間で修了できたのは、社会人が学ぶための制度を整えたAIITのサポートがあったからこそ。私自身も出席できる日は、たとえ30分の受講であってもキャンパスに足を運びました。
 入学と同時にブログを開設したことも、学びの継続に有効でした。社会人学生としての自覚を促すという私的な目的で始めたブログでしたが、働きながら学ぶことに迷っている人からの相談が寄せられるようになり、後日私の書き込みを読み入学したという後輩とも出会いました。

他社の業務改善に取り組むPBL経験の希少性と有効性

 苦労しながらも、学び続けた甲斐は十分にありました。在学中に2度の学会発表も経験。そのうち1回はPBLの成果です。
 PBLでは、日本の法令に準じたプライバシー影響評価のガイドラインを作成し、これを協力企業が導入するシステムに当てはめました。世代や背景が異なる人との協働プロジェクトは苦労が絶えず、一時は一人で論文にしたほうが合理的ではないかと思ったほど。しかしその経験の価値は、修了後に高まります。特に企業側の人間として後輩のPBLに協力し、少し離れた立場でこの学修に関わった際、価値観をぶつけ合いながら他社の業務改善に真正面から取り組む経験の希少性と有効性を実感しました。
 入学時に在籍した会社にはこれまで最長の8年務めましたが、異動によりIT部門から離れたこともあり、新たなシステム開発の現場を求め転職。そして現在はEコマース推進のリーダーとして、自社ブランドを日常のカルチャーレベルで広める戦略を立案・実行しています。システム開発からこれを活用する立場に移っても、AIITで構築したITの盤石な基盤が私の仕事を支えています。

小杉 晋央さん

小杉 晋央さん

PROFILE

日本IBM株式会社所属 東京理科大学出身 創造技術専攻 2015年修了

ソフトとハードを統合できる強み 情報へのアクセス方法が変わりつつある

 大学を卒業してから、ソフトウェアエンジニアとしてキャリアを重ね、開発プロジェクトを任される立場にもなりました。ソフトウェア開発には自信がありましたが、研究部門への異動が決まり職場環境が一変します。大学で修士・博士課程を修めた研究職員に囲まれ、私も学位の必要性を実感。AIITへの入学を決意します。
 創造技術専攻に進んだのは、それまで学んだことのないデザインやハードウェアについての知識を修得するためです。
 ちょうどIoTやVR・ARなどの新しい技術が注目され始め、人の情報へのアクセス方法が変わりつつありました。私は、高齢者や障がい者がストレスなく情報にアクセスできる技術開発に取り組むなかで、ソフトとハードをそれぞれ別に開発することの限界を感じていました。そこで、操作を容易にするデザインや使いやすいハードウェアについてAIITで学び、それらの知見をソフトウェアのスキルと融合させて新たな領域を開き、研究員としての強みにしようと考えたのです。

増えた引き出しの数だけ思考を自由にする

 3年間の長期履修で修得した知識は、ITに対する世界観を大きく広げてくれました。例えばハードウェアについては、メカニズムに行きがちな私の視線を、形が持つ訴求力に向かわせます。授業では、最適な形を得るまでのプロセスにも言及。設計図どおり正しく書けば正しく動くことを当然とするソフトウェア開発をものづくりの基準としていた私も、ハードウェア技術者である同期生が語る「遊びが必要」という言葉の意味と、図面にとらわれないものづくりを理解できるようになりました。
 デザインで色や造型を決める背景や根拠も知り、かつてのソフトウウェア開発でユーザーデザインエンジニアが決めた画面表示に対する疑問も解けました。
 修得した知識の集大成として、2年次のPBLでは脳波に感応してシャッターを切るデジタルカメラを開発。私はそれを改良し、ドライブレコーダーとして自家用車に搭載しています。
 仕事では、手による操作を必要とせず、顔の動きに応じて遠隔地のロボットが動くテレプレゼンスロボットを開発。そこではテレビ会議サービスの作成から、カメラをつけたロボットの製造までを一人で完結させました。特許を取得したこの技術は、へき地や遠隔地で暮らすお年寄りの医療や保健に使われることを想定し、大学との共同研究を進めています。
 ソフトウェアのほか、ハードウェアやデザインにも通じた強みは、研究者としての引き出しを増やし、自由な思考を私にもたらせてくれました。

松井 徳子さん

松井 徳子さん

PROFILE

音響機器メーカー 法政大学出身 創造技術専攻 2014年修了

「音楽体験」をデザインしたい プロ仕様の製品にはデザインは不要か

 大学の卒業研究は、楽譜の自動作成技術について。放課後は音楽サークルで活動し、就職も音響機器メーカーへ。エンジニアとして音楽に関わるという夢は、大学卒業時にひとまず実現できました。
 職場での担当は、プロ仕様のマイクロホンの設計。高度で繊細なスペックを追求しつつ、形状設計には常に迷いと悩みがつきまといました。次第に頭をもたげてきたのは、プロ用の機材にデザインは不要なのかという疑問。デザイナーになりたいわけではなく、設計にデザインの要素を取り入れ、ものづくりを広い視野で捉えたかったのです。
 学びの場としてAIITを選んだのは、ものづくり全般におけるデザインの位置づけや価値が学べそうだったこと。そして、実務経験のある先生や社会人学生から、他社のものづくりを知ることができると思ったからでした。

感性と機能の相互作用を理解

 AIITで学び、デザインの概念が広がりました。また、マイクロホンの設計とは製品をつくって完結するものではなく、音楽という無形の作品を多くの人に届け、さらにそれを聴いた人の感動や喜びも含めた「音楽体験」の一端を担っているという意識が養われたことも大きな成果です。それまで混沌としていた感性の要素とスペックで表される機能との相互作用にも理解が行き届くようになりました。感性という不定型な要素を統計的に数値化できる手法を知ったことも、エンジニアの私を安心させてくれました。

マーケティングに生かすものづくりへの意識

 ところが、課程を修了し新たな気持ちで設計に臨めると思った矢先、製品設計からマーケティングを担当する企画部門への異動が決まります。
 しかし、AIITで学んだことが生かせないと思ったのは最初のうちだけ。むしろユーザーと自社製品をつなぐ位置に立ったことで、「音楽体験」をデザインするという仕事観に実態が伴いました。音楽と同様に無形の対象を扱うサービス工学で学んだ知見も、いまの仕事なら活かせます。かつて私も否定できずにいた、ハイスペックな製品の価値は分かる人だけが分かればいい、という意識はもうありません。デザイン技法を学んだおかげで、言葉や数字で伝わりにくいことはその場で絵にすることもできます。スペックだけを追求していた設計に比べ、気を配らなければいけないことは多様で複雑になりましたが、何が大切かを図る判断規準が明確になった私の視界は良好です。

渡辺 慎太郎さん

渡辺 慎太郎さん

PROFILE

株式会社ジュピターテレコム所属 一橋大学卒業 情報アーキテクチャ専攻 2013年修了

プロフェッショナルの矜恃を修得 在学中に方向転換し専門性の修得を目指す

 入学時は、製造業でITを担当。従業員200人ほどの会社で、基盤構築からアプリケーション開発まで手がけました。開発や運用は学生時代から業務経験があったものの、もともとの専攻は数理統計学であるため、IT基礎力の網羅性不足を自覚せざるを得ません。培った経験を体系化すべくAIITに入学しました。
 しかし入学後に通信事業者に転職したことで、目的意識が変わります。業界で市場価値を高めるためには、基礎だけでなく高度な専門性を獲得せねばなりません。そこで、自分の得意分野と市場動向を考慮し、選択肢をデータ解析と情報セキュリティとに絞りました。最終的には、PBL説明会で研究の公共性に触れた教授の言葉に感銘を受け、後者の分野で専門性の修得を目指すことになります。

情報セキュリティを選び指導教授と共同論文

 2年次のPBLでは、システムの企画・設計時からプライバシー保護を盛り込み、技術面や制度面での改善を図るためのリスクアセスメント手法を開発しました。また、同手法を用いた顧客企業へのコンサルティングも実施しています。
 これらの経験から、非技術的要素の重要性を肌で学びます。たとえば法律や経営組織論です。1年次に情報法の講義を受講していたことが奏功しました。また、以前は見向きもしなかった経営学の書籍に目を通すようになったのも、この頃からです。
 PBLの成果は指導教員やメンバーと共同で学会にて発表し、論文にしています。

専門性に裏打ちされた行動規範の体得

 その後、勤務先にてサイバーセキュリティ専門部署の立ち上げに参画し、現在はグループ全社を統括する立場にあります。修了後にCISAやCISSPといった国際資格を取得しましたが、これらの基盤はAIITで培ったものです。
 AIITとのつながりは現在も続いています。在学生のPBLのレビューをすることもあれば、必要に応じて科目履修生として聴講します。他企業の修了生と一緒に仕事をすることもありました。
 情報セキュリティの仕事は、現実主義的に振る舞う一方で、常に原理原則を見失わないバランス感覚が重要です。また、相手の立場や力量に応じた適切なコミュニケーションも不可欠です。在学中の最大の収穫は、このようなプロフェッショナルとしての行動規範を、PBLを通じて体得したことだと考えています。
 近年は、セキュリティ事故が世上で取り上げられる機会が増えました。喧噪にあっても浮足立つことなく、お客さまを守るための各種施策を企画・推進していきます。