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教員連載コラム

不確かな未来との対話

  • 50回コラム

    「システムのバランスとチームワーク」

    創造技術専攻 准教授 舘野寿丈

「システムのバランスとチームワーク」

 最近、3D(立体視)の映画が増えた。一昨年頃に、いよいよ出てきたなと思っていたら、以後、多くの映画が3Dでも上映されるようになってきている。立体視といえば、20年ほど前に筆者も研究の一部として扱っていたので懐かしい。当時はバーチャルリアリティという言葉が初めて現れた時代で、ヘッドマウンテドディスプレイ、データグローブなど、SFに出てくるような名称の付いた装置が続々と登場した。何もかにもが高価で簡単には手を出せないものばかりだった。その後も長い間、パーソナルユースの製品として出てこなかったのも、価格が一番の理由であったに違いない。それが急速に普及を始め、気付いてみれば3Dゲーム機、3Dデジカメ、3Dビデオムービー、3Dビデオレコーダまで普通の電気屋さんに置かれるようになった。

 ところで、なぜ今になって立体視が流行をみせているのだろう。価格は出荷量が増えれば下がってくるものなので、価格だけでは片付けられないはずだ。技術的な点はどうだろう。立体視をさせるには、右目には右目用の映像、左には左目用の映像を提示する技術が必要になるが、その実現方法はいくつかあるものの、みな20年前と全く変わっていない。これだけ技術進歩が早い時代に20年間全くかわることなく存在しているのだから、そもそも高い完成度を持った製品といえる。立体視技術に技術革新があったとは思えない。

 やはり、立体視を何かに利用するシステムとして考えた時に、周辺の技術や装置が足りなかったと考えるのが適切だろう。例えば、3D映画あれば、映像を立体に見せる装置が良くても、3D映画を作るための編集装置や、3D映画を自宅で観るための記録メディアの技術などが不足していれば、結局は使えないことになってしまう。

 一般に、顧客の要求を満足させるためには、複数の機能を組み合わせて実現させる。顧客が製品を使う時には、どのように利用したいという用途があるわけで、その用途に向けた機能が揃わなければ顧客の満足を得ることができない。
 同様なことはPCでも思い当たる。PCの利用者にとって応答性の早いことが要求であるとしよう。するとPCを選ぶ時にどうしてもCPUの性能に目がいってしまう。もちろんそれは重要であるが、実際はCPUだけではなく、メモリーの容量やグラフィックボードの性能など、関連する機能がすべて良くなければ結果に結びつかない。CPUだけ飛び抜けた性能を持たせても宝の持ち腐れとなる。システムには全体のバランスが重要なのである。

 このことは、機械のみならず、人間も同じではないか。PBLのプロジェクトで活動を進める時、一人だけが得意分野で飛び抜けた能力を持っているとしよう。そのプロジェクトは成功するだろうか?恐らく、その一人の能力を使いきれずに終わるに違いない。プロジェクトは一つのシステムであるから、全体のバランスがとれていなければ結果に結び付かない。それでは、メンバー全員の画一的な能力底上げが必要だろうか?もちろん、そうも思わない。人はみな得意な分野が異なるので、それを上手にバランスさせることが大切だ。

 今、就職が非常に厳しいと言われている。本学にも新卒で入学してきた学生がいるので、気を揉むところだが、同様に考えてみてはどうか。会社も一つのシステムであるから、バランスが重要だ。良い会社はそれがわかっているから、自社に欲しい人材を絞り込んでいるはずだ。掴みどころがなくても潜在能力高ければ採用するという時代ではない。自分に何ができるかを明確に示せば、自分に合う会社がきっと採用してくれるに違いない。

 本学のPBLはこのようなチーム活動を学ぶ絶好の機会だ。良い経験をして、ぜひ社会で役立てて欲しいと思う。

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