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教員連載コラム

不確かな未来との対話

  • 39回コラム

    「第三の場所」としての学びの場」

    創造技術専攻 助教 安藤昌也

 みなさんは、「第三の場所(Third Place)」という言葉をご存知でしょうか? 第三の場所とは、社会学者のOldenburgが、主に都市生活において不可欠なものの一つとして指摘したものです。自宅は「第一の場所」、職場は「第二の場所」です。「第三の場所」とは、イギリスのパブやフランスのカフェのように、不特定の人々が交流する物理的な空間のことを指しています。人々が社会性を維持するために、社会的交流をする場所が必要で、その場所こそが第三の場所だというわけです。かの”スターバックス”は、お客さまの第三の場所となるべく店舗設計をしていることでも有名です。

 確かに、自宅と職場の行き来だけの生活は、創造的な生活とは言えません。だからと言って、普通にカフェや居酒屋に行って友達を作ったり他のお客さんと交流したりというのも、(中には得意な方もいらっしゃるでしょうが)なかなかできることでもありません。“第三の場所を手に入れて、創造的で楽しい生活がしたい”、そんな思いは誰にでもあるものです。

 そんなニーズの表れなのか、最近「勉強会」や「勉強カフェ」が都内を中心に一つのブームになっています。昨年・今年と、勉強会自体を勉強する「勉強会カンファレンス」なるイベントも開催されるほどです。元々IT系のエンジニア達は、技術動向などを一緒に勉強し共有する自主的な勉強会や読書会を開いていました。こうした勉強会が、mixiやtwitter、USTREAMなどのソーシャルメディアを介して共有され、多くの人が関わるようになり、一つのブームになっていったのだと思います。

 勉強会や読書会の魅力は、モチベーションを同じくする人と新しいつながりが出来ることです。自分一人では、勉強するぞ!と意気込んでもなかなか意欲が続きません。しかし、同じモチベーションの人と知り合うことで、教え合いもできるし、質問や相談も気軽にできるわけです。つまり、勉強会は都市における第三の場所として、とても有効に機能していると言えます。

 もちろん、社会人を主な対象とした専門職大学院である本学(AIIT)も、第三の場所としての学びの場、だと言えるでしょう。本学は、専門職修士の学位を得られる通常の学位プログラムの他にも、様々な学びの場、交流の場を提供しています。例えば、特定の専門領域を学ぶ「履修証明プログラム」や専門分野の第一人者による講演会と交流会を行う「AIITマンスリーフォーラム(Info Talk, デザインミニ塾)」、「ものづくり経営人材育成講座」などの特別講座といったように、実に多様なプログラムが提供されています。こうしたプログラムは、大学というと堅苦しいイメージを持つ人に対しても、気軽に参加できるよう工夫された内容になっています。

 実は私も、履修証明プログラムの一つである「人間中心デザイン」のプログラム責任者をしています。今年このプログラムには、定員20名のところ29名の方にご受講いたき、現在も開講中です。主にソフトウェアやWebサービス関連のエンジニアの方が多いのですが、とてもモチベーションの高い方々達が集まっています。

 先日講義の中で、「社会人にうれしい学びの場とは?」というテーマで、KJ法を発想法として正しく活用する練習を行いました。その結果、学ぶ内容が実務に役立つかどうかといった観点だけでなく、一緒に学ぶ人との学び合いや仲間意識といった側面も重要だ、といった気づきがありました※。確かにこのプログラムに参加されている受講生の皆さんは本当に仲が良く、毎週のように懇親会を開いて、いろいろと議論しています。まさに第三の場所としてとてもうまく機能しているなぁ、と実感しました。

 AIITは、都市における第三の場所としての、多様な学びの場を提供する、新しいタイプの大学院だと思います。今後も多くの方に利用してもらえるよう、一教員として努力していきたいと思います。

 ※この講義の講師は、専修大学上平崇仁先生です。また、作成したKJ法の図解マップは、プログラムのブログで公開しています。(http://hcdprogram.wordpress.com/2010/10/23/kj/)

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