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不確かな未来との対話

  • 34回コラム

    「プロジェクトマネジメントとPBL」

    情報アーキテクチャ専攻専攻長・教授 酒森 潔

 「プロジェクトマネジメントとPBL」
本学ではそれぞれの専門分野でアーキテクトとして優れた仕事ができる人材すなわち「高い業務遂行能力を持つアーキテクト」を育成するためにPBL(プロジェクト・ベース・ラーニング)という教育手法を取り入れている。このPBL活動の効果を最大に高めるには、PBLの幹となるプロジェクト活動の特徴を理解することが大切である。そこでプロジェクトマネジメントの特徴について整理し、PBLの効果向上のポイントを見極めたい。

 【プロジェクトの特徴】
プロジェクトの最大の特徴は「独自性」「有期性」である。チーム活動や目的を達成するということもプロジェクトの特徴ではあるが、これらは通常の組織型の業務においても求められるものであり、プロジェクト活動だけにある特徴というわけではない。プロジェクトベースというからにはこの特徴を十分考えて、PBLでは「周りの人がやったことのないこと(独自性)」や「期間内に行うこと(有期性)」を意識すべきである。
プロジェクトは繰返しが無い一回性のものである。毎回独自のものを達成するために組織されるものであるので、過去の仕事を分析し活動の方法を理解するだけではだめであり、過去の経験から、今のプロジェクトで新たなことを発想する「洞察力」が必要である。

 【プロジェクトマネジメントとは】
プロジェクトマネジメントとは「スコープ」、「期間」、「コスト」のバランスを保ちながら高品質の成果をめざすものである。スコープには成果物スコープと成果物を構築するプロジェクトスコープがあり、アーキテクトが責任をもつものが成果物スコープ(アーキテクチャといってもよい)、プロジェクトマネジャーが考えるのがプロジェクトスコープである。
本学の教育の目的はアーキテクトを育成することであるが、アーキテクトが成果物を完成させるためには、プロジェクトスコープも考える必要があり、さらに期間やコストとのバランスを考える必要もある。新しいことを産み出すためには、3つの制約をうまくバランスするプロジェクトマネジメントが必要である。

 【プロジェクトマネジメント活動とプロダクト活動】
スコープ、期間、コストをバランスするプロジェクト活動はさらに「プロジェクトマネジメント活動」と「プロダクト活動」に分けることができる。プロダクト活動はアーキテクトとして専門的で独自性のあるものを産み出すもので、ネットワークの専門家のプロダクト活動とインダストリアルデザインの専門家のプロダクト活動はそれぞれユニークである。
プロジェクト活動はプロダクト活動に大きく依存するものであるが、プロダクト活動の効果を高めるためには必要なものでもある。

 【プロジェクト活動に必要な能力】
プロジェクト活動に必要な能力とは、プロジェクトマネジメント知識、プロジェクトマネジメント実践力、人間力といわれている。プロジェクトマネジメント知識は書籍や講義で身に着けることができるが、実践力や人間力はそうはいかない。PBL活動は実践力と人間力を身に着けるためのものともいえる。特に人間力の養生の場としては企業内以上に最適な場所である。
企業において特に階層型の機能組織では、上司の指示で業務が進む。これに対してプロジェクトは、ある期間集められた上下関係の弱いチームである。
PBLもプロジェクトであり、メンバーの帰属会社も地位も関係なく完全に平等な立場である。このようなチーム形態を統率し期間内に成果を出すには、高い人間力を必要としている。

 【PBLの効果と成功要因】
プロジェクトの特徴やポイントを考えたPBL活動が、最大の教育効果を産み出す。PBL型教育で期待できるのは、実践力や人間力であるが、それよりも大きな最終目的はアーキテクトの育成である。アーキテクトがプロダクトを産み出す力であり、そのためにはプロダクトの知識、プロダクト構築の手順、発想などが必要になる。これらの手順の実行力や発想力を高める活動がプロジェクトマネジメント活動であり、これらは大きく影響し合っている。
学生のアーキテクトとしての成長がPBLの成功であり、そのためにはプロジェクトマネジメントについて十分理解し実践できることが必要である。

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