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教員連載コラム

不確かな未来との対話

  • 28回コラム

    「最近 思うこと」

    創造技術専攻 教授 村越英樹

 昨年、弟と父が死んだ。2人とも癌だった。

 弟の死は、突然だった。弟は数年前に口内炎ができて治らないと言っていたが、病院で診察を受けた結果、舌癌と診断された。その後、数回の手術、抗癌剤や放射線など治療を続けて、昨年の正月には4月からの職場復帰にむけてリハビリを開始していた。3月に入って喉に違和感を覚え診察を受けると、癌が転移していることがわかり、数週間の放射線治療のため入院することになった。私たちは治療によって、病巣を無くして、職場復帰のためのリハビリを開始できるものと信じていた。しかしこの時、弟はもっと深刻な状態であることをわかっていたと思うが、それを言うことができなかった。結局、癌細胞の成長を止めることができず、自宅療養中8月4日に息をひきとることとなる。

 一方、父の死は昨年2月に予告されていた。父は2年前に腸閉塞になり、緊急手術を受けることになったのだが、この時に大腸癌が発見された。当初は大腸の癌を取り除けば完治するということであったが、その後の検査で腹膜や肝臓に転移していることがわかり、昨年2月に医師から1年もたないことを宣告された。父の余命があとわずかであるという宣告を直接医師から聞いたのは、父本人と弟であった。私はそのことを父から電話で聞いた。体が弱く、若い時に肺結核を患い、片方の肺を切除した状態で、私たち兄弟を立派に育ててくれた父に「ありがとう」と伝えたいと思う一方、「私もあと30年ぐらいしか生きられないのか」と不謹慎なことを考える自分もいた。死の宣告を受けた父は、墓の選定から葬式のやり方まで自分で決めて、「後は任せた」というように11月12日、この世を去った。

 1年で2人の身内を亡くしたが、得たものあった。それは自分自身の人生もそう長くないということを実感したことである。今まで自分の人生は、まだまだ先が長いと思っていた。やりたいことは、まだまだたくさんある。しかし、残された時間はこれまで生きてきた時間より短い可能性が高い。ここへきて、残された貴重な時間で「幸せな人生だった」と言えるように、やりたいことを取捨選択し、しっかりと計画を立てて、実行していくが重要であると強く思いはじめた次第である。死を見据えて。

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