研究科の紹介

教員連載コラム

不確かな未来との対話

  • 82回コラム

    豊かに人と共生するパートナーロボットのデザイン

    創造技術専攻 内山 純 准教授

 2017年3月、かのレイ・カーツワイル氏はSXSW Conferenceのインタビューで2045年としていたシンギュラリティが2029年に早まるとの見方を示しました。論理的思考を司る大脳新皮質の人為的拡張によりヒトがポスト・ヒューマンに進化するとしています。この大胆な予測が現実となった時、それはヒトなのでしょうか。サイボーグ、アンドロイド、それともロボットと呼ぶのでしょうか。
 このような進化はすぐにこないにしても、人とロボットが共生する時代はそこまで来ています。あるいは、掃除ロボットのヒットや続々と発売されるコミュニケーションロボットをみると、私たちは既にロボットと共生していると言えるのかもしれません。ここでは日常生活の支援を目的とするロボットをパートナーロボットと呼び、そのデザインについて考えてみます。

 ご存知のように、ロボットはこれまで工場内の産業用ロボットとして発展してきました。政府は2020年までに製造分野で使用される産業用ロボットの市場規模を6000億円から2倍の1.2兆円に拡大させ、非製造分野で使用されるサービスロボットは600億円から20倍の1.2兆円とするとしています[1] 。国内市場は2025年に5.3兆円、2035年には9.7兆円になるとも予測されており、特にサービス分野の伸びが特に著しいとされています[2]。人と身近に接するパートナーロボット市場も急速に広がっていくことでしょう。
 これまでパートナーロボットは広く普及することはありませんでした。2000年台前半に話題になったソニーのエンターテイメントロボット、イヌ型のAIBOは開発に私も関わっておりましたが、ビジネスとしては成功したとはいえず、ヒト型のQRIOも商品化には至りませんでした。
しかし、ここ数年の
 ・センサー、人工知能 ( AI ) 技術、情報処理技術の向上。
 ・急激な人口構造変化に伴う新たなニースの確保 ( 医療・介護、労働力確保 )。
 ・情報通信ネットワークの整備。
を背景に生活サービス分野でのロボット活用に改めて注目が集まり[3]、パートナーロボットと呼べるものも次第に普及しつつあります。

 さて、身近になってきたパートナーロボットは、どのようなデザインがあるでしょうか。ソフトバンクのPepper、シャープのRoBoHoN、デアゴスティーニのRobi2、ヴィストンのSotaなど、コミュニケーション機能に注力したロボットはキャラクターを付加して親しみやすさを強調したものが多いようです。AIBOの場合もそうでしたが、開発メーカー側が意図的にキャクターを付加し、そのキャラクターの世界観も含めて訴求したほうが市場に受け入れやすいという考えです。
 総務省の情報通信白書 ( 平成27年版 ) [3]に、パートナーロボットの望ましい形態についての調査結果が示されています。「人型(人間そっくり)」、「人型(人間そっくりではない)」、「動物型(犬や猫など)」、はそれぞれ2割程度です。最も多い回答は「形態にはこだわらない」で約3割、「用途に合わせた機械的形態」の2割程度と合わせると生物的な形態にこだわらないという回答が約5割になります。

 パートナーロボットのデザインにおいて、親しみやすいキャラクターは受け入れやすくするために有効であることは理解できます。しかし、外観、動作、反応も含めたロボットの立ち振舞いから推察される「知性」とのバランスが最も重要であると私は考えています。
 先日、クリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」を観ました、映画に出てくる人工知能ロボットTARSは無機質なデザインですが主人公のパートナーとして大切な役割を演じています。目的に応じて、その時々の対応や動作により多様に変化するTARSはパートナーロボット・デザインの1つの方向性を示唆していると感じました。
 これからのパートナーロボットは、それ自体が学習し、「知性」が進化していきます。これまでと違った新しいデザインアプローチが必要となってくるに違いありません。本学、創造技術専攻が目指すデザイナー、イノベーションをもたらす「ものづくりアーキテクト」が解決すべき課題が沢山あります。
 皆さん一人ひとりの笑顔が浮かんでくるようなパートナーロボット、皆さんしか描けない、「人とロボットが共生する豊かな未来」がそこにはあるはずです。

 2029年、ロボットたちのマインドフルネス、奥のロボットは皆の幸せを祈っているのでしょうか( 図1 ) [4]。ポスト・ヒューマンに進化したあなたもこの中に紛れているかもれません。

[1] 経済産業省 ロボット新戦略 2015年
[2] 経済産業省 ロボット産業市場動向調査結果 2013年
[3] 総務省 平成27年版 通信情報白書 pp. 191-198,2015年
[4] 産業技術大学院大学紀要 No.10, pp. 53-59,2017年

コラムトップへ戻る