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教員連載コラム

不確かな未来との対話

  • 61回コラム

    スマートライフ、生活のスマート化、スマートしていますか。

    情報アーキテクチャ専攻 助教 慎祥揆

 136年前(1876年)の3月10日は、Alexander Graham Bellが世界で初めて、音声の送受信に成功した日です。電話の時代の始まりです。

 その26年後の1902年にはアメリカの発明家であるNathan Stubblefieldが自分の果樹園に約36mの高さのアンテナを立てて無線で人間の声を伝達するシステムの開発に成功します。世界最初の携帯電話と言ってもいいでしょう。しかし、大きさがマンホールの蓋と変わらない大きさでしたので、実際持ち歩けたでしょうか。

 その105年後の2007年iPhoneが発売されます。ベルの発明から136年が過ぎた現在、携帯電話は私たちの生活に欠かせないものになっています。

 最近はいつの間にかiPhoneやAndroid系の携帯電話の登場で、携帯電話という言葉とともにスマートフォンという言葉を使い始めるようになりました。
電話と携帯電話の一番の違いは持ち歩けることだと思います。それならば携帯電話とスマートフォンの一番違うところは何でしょうか。

 Wikipedia を見ると「スマートフォン(英: smartphone)は、インターネットとの親和性が高く、パソコンの機能をベースとして作られた多機能携帯電話・PHS。「スマホ」と略されることもある。」と掲載されています。多分、ここで重要なのはインターネットとパソコン機能でいう言葉だと思います。

持ち歩ける + インターネット + パソコン

この三つが重要なポイントです。この三つの特徴がどのように私たちの生活を変えているでしょうか。それと、私たちの生活にこのスマートフォンが入ることによって何が変わったでしょうか。実際、皆さんの生活はスマートになったでしょうか。

 スマートフォンによる代表的な変化は「場所に拘らないコミュニケーションの速度」だと思います。これは「携帯電話」の部分だけではなく、社会全般に革命をもたらすことになります。スマートフォンを使うことによって個人個人の今までの生活価値に変化が起こり、さらに社会自体を変化させることになり、単純な社会進化を超えています。

 中東や北アフリカで行った独裁に対する戦いは、twitterを通じて集まったその国の一般市民の力と、それを応援する世界中の人が集まり、政治を変えました。これは、その現場で、その時間の情報を流せることが可能になり、臨場感ある情報の生成が可能になったという事です。

 情報に感情と時間が含まれることによって、ただの情報からある現状を作ることが可能になりました。その上、少数の人たち(巨大メディア、政府)が持っていた情報生成領域に、個人がリアルタイムで入ることが可能になったのです。ある世界的な歌手が亡くなった情報はマスコミよりtwitterの方が40分も早く発信したのは既存の限られていた情報獲得元から多様な情報取得の道が開けられたことを意味します。

 他にアメリカや韓国では選挙にSNSを用いた選挙戦略によって、今までは小さい力しか持っていなかったと思われた個人がどのように社会を変化させるかを見せたことで、個人が世の中を変える力を持っていることを証明することになりました。これは、18世紀、産業革命の始まりによる急速な機械化で、人間の部品化による人間尊厳性の墜落から、スマート世界が現したことによる個人の力の重要性の高まりで人間中心社会への回帰を意味するかもしれません。

 既存では個人の力では出来なかった事が可能になったのは、個人個人が主導的な動きを見せる事が可能になった社会の表れだと思います。もはや、一人の声が一人の声でとどめられない社会になりました。たとえ、その声が間違っていても。

 とにかく、スマートフォンを用いたスマートライフが、ただウェブを検索し、メールを読んで、SNSをしたり、電車の中での簡単な仕事が可能になった事で満足してはいけません。皆さんが主導的に社会に参加することによって皆さんは情報の利用者から生産者になることが出来るのです。

 しかし、皆さんが生産者になることは、このスマートな機械をどのように使うかを思い悩まなければならなくなったことを意味します。皆さんが何を作るかによって社会はスマートになることもありますが、逆になる可能性もあり得ることでしょう。

 ですから、まず、スマートになるべきであるのは皆さんではないでしょうか。技術自体は堅い物かも知りませんが(なのでハードウェアと呼ぶのでしょうか)、そこに人間の感性が含まれることによってスマートになるはずです。本当のスマートライフで一番重要なのは、このようなスマートな世の中をもっと賢く生きるスマートなあなたです。自分をもっと賢くすることに工夫しましょう。

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