革新的な教育の枠組み

PBL型教育

今回のインタビュイー 戸沢義夫教授 戸沢義夫教授1979年、日本アイ・ビー・エムに入社し、東京基礎研究所でエキスパートシステムや知識ベースシステム等に携わる。1992年に新設されたコンサルティング部門に異動し、情報戦略コンサルティングを専門とする。2000年、Distinguished Engineer。2006年に産業技術大学院大学教授に転じ、08年より2年間、情報アーキテクチャ専攻長も務める。

AIIT PBLインタビュー

  • 3回インタビュー

    業界ニーズにマッチしたITを修得
    ―「情報アーキテクト」をめざす学び―

――「情報アーキテクチャ専攻」で育成をめざすのは、どのような人材ですか。

戸沢 従来、わが国の大学等が育成するIT技術者は、産業界が求めるスキルを備えているとは限らないと指摘されてきました。AIITがめざすのは、こうした従来の大学教育では修得が困難だった実践的なスキルを身につけた「情報アーキテクト」の育成です。

――具体的には、どのようなスキルを修得するのですか。

戸沢 IT業界は、製造業からサービス業にシフトしました。ITサービスでのビジネスは、サービス利用者(発注者)とサービス提供者の相対的関係で良否が決まります。ITサービスの提供者は、発注者の期待を超える高いレベルのサービスを求められます。そのためには発注者のビジネス的背景を深く理解しなければなりません。業界のしくみやビジネス環境、企業の経営理念やカルチャーなどにマッチしたサービス提供が必要です。ITスキルや知識はもちろんのこと、ソフトスキルといわれるリーダーシップやコミュニケーション力、ネゴシエーション力が不可欠です。情報アーキテクチャ専攻では、これらコンピテンシーの獲得をめざすプログラムを提供しています。

――AIIT独自のPBL(Project Based Learning)ですね。

戸沢 欧州では、すでに多くの大学でPBLを採り入れ、有為な人材育成の効果を挙げています。PBLでは、与えられた課題に対しさまざまな方法論を用いてプロジェクトを実施してもらいます。重要なのはこのプロセスを通じて学生の一人ひとりが「できなかったことができるようになった」「他の問題に応用できるようになった」「コンピテンシーを獲得できた」という結果を得ることです。意欲ある学生にとって新しいことを学べるチャンスは大きいといえます。

――PBLには小チームで取り組む利点もありそうです。

戸沢 PBLはチームで取り組むので、多様な視点、価値観によって、一人で考えるより、よりよい結果が得られる点は見逃せません。社会人が多く、学生たちのバックグラウンドは実にさまざまです。そうした学生たちのディスカッションから学べるといった声が多いのも事実です。企業のプロジェクトでは、メンバーが得意な役割を分担しがちです。一方、本学のPBLでは、教育上の配慮から学生たちの成長を期待して、あえて不得意分野や未経験の作業を担当することもあります。そうした部分は自ら学修して知識やスキルを補いながら、プロジェクトに参画していくわけです。

――次回は、プロジェクトの実際についてお尋ねします。

ITサービス提供者には高いコンピテンシーが求められる