創立10周年記念シンポジウム~AIIT、未来への挑戦~

創立10周年記念シンポジウム~AIIT、未来への挑戦~を開催しました

創立10周年記念シンポジウム~AIIT、未来への挑戦~

 首都東京の産業をリードする高度専門職人材育成を目的に設置した産業技術大学院大学(AIIT:Advanced Institute of Industrial Technology)は、平成27年12月5日に創立10周年を迎えました。これを記念して「AIIT、未来への挑戦」と銘打ったシンポジウムを丸ビルホール(東京・千代田)で開催しました。第一線で活躍する気鋭の起業家が、起業・創業で必要なポイントなどを語ったほか、IT業界を牽引する経営者による講演や著名小説家などとの鼎談、さらには本学の修了生と学生の2人が「私が社長になった理由」と題して起業報告をしました。

※2016年2月10日付 日本経済新聞朝刊 広告特集にて掲載しました。

創立10周年記念シンポジウム~AIIT、未来への挑戦~

気鋭の起業家がベンチャー企業を成功へと導く秘訣を語る!

挨拶

産業技術大学院大学 学長 石島 辰太郎 氏

石島辰太郎

 産業技術大学院大学(AIIT)は、社会にイノベーションをもたらし、産業を活性化するスーパープロフェッショナルを育成する公立の専門職大学院です。従来の大学教育が知識とスキルの修得を主な目的としているのに対し、AIITはアーキテクト人材に必要な業務遂行能力を鍛えることに重点を置いています。
 そのため2年次はプロジェクトベースのカリキュラムを実施しているのが大きな特徴です。学生は数人ずつのグループに分かれ、それぞれのプロジェクトテーマに取り組むことで、異分野コミュニケーション能力やリーダーシップ、フォロワーシップなど、チーム力を最大限に発揮する上で不可欠な業務遂行能力を身につけていきます。
 単位バンク制度や全講義のビデオ化など、忙しい社会人学生の便宜を図る先進的な学修環境も整備しています。
 イノベーションは起業、創業によってもたらされます。AIITは新しい事業分野を生み出すスーパープロフェッショナルを育成すべく、これからもチャレンジし続けていきます。

記念講演

「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。」 ユーグレナ 社長 出雲 充 氏

出雲充

 私がミドリムシ(学名・ユーグレナ)のビジネスを始めたのは、大学1年の夏に訪れたバングラデシュでの経験がベースにある。多くの人が飢えに苦しんでいると思っていたが、実際に行ってみると、おなかをすかせている子どもは1人もいない。問題は飢餓ではなく、炭水化物以外の栄養不足だとわかった。少量でも栄養満点の食材を探し、大学3年のときにミドリムシの存在を知った。
 ミドリムシは藻の仲間でありながら動物の特徴も持ち、59種類もの豊富な栄養素を含む上、油脂はバイオ燃料に利用できる。食料問題や地球温暖化防止の切り札として研究されていたが、ほんのわずかでもバクテリアなどが紛れ込むとミドリムシを食い尽くしてしまうため、大量培養は無理だといわれていた。だが、無菌状態で培養するには莫大なコストがかかる。
 我々は千回以上の実験を繰り返し、天敵が寄りつかない培養液を工夫することで、2005年末に屋外大量培養に成功した。ところが2年間で500社に売り込んだが、採用いただいた企業はほぼない。いよいよ倒産かと思ったとき、大手商社の食品担当が興味を示し、08年5月に採用が決まった。その商社は誰もやっていないミドリムシをリスクと考えるのではなく、チャンスと捉えてくれた。その後多くの企業の支援を得て事業が拡大、東京大学発のベンチャーとして初めて東証1部上場も果たした。
 ベンチャーが成功する条件は「1番」にこだわることだ。そのために最も必要なのは、適切な科学技術と試行回数だ。成功率が1%でも、459回繰り返せば99%成功するという。私は科学技術と試行回数の掛け算で、誰でもイノベーションを起こすことができると確信している。

「個性の経営〜イノベーションを生み出す〜」 サイボウズ 社長 青野 慶久 氏

青野慶久

 1997年に入社3年目の会社を辞め、松山市の家賃7万円のマンションで会社を設立、3人でウェブを利用したシンプルで使いやすいグループウエアの販売を始めた。3年後には東証マザーズに上場するなど、滑り出しは順調だったといえる。
 一方、離職率は高く、私が代表取締役に就任した2005年には28%に達していた。4人に1人が1年以内に辞めるという状況は、会社として非常に効率が悪い。辞める人を引き留めるため「給料を上げる」「好きな仕事をしていいから」と説得してみたが、全く効果はなかった。
 ようやくモチベーションは一人ひとり違うことに気づき、会社の制度や風土をつくりかえていった。「百人いれば百通りの人事制度があっていい」という考え方を基本方針に、公平性を捨て、個性を尊重する制度にシフトした。
 その1つが選択型人事制度だ。ライフスタイルに合わせて、働く時間の長さと場所によるワークスタイルを選び、周囲に宣言する。「育自分休暇」は辞めてから6年間は自由に戻ってこられる制度だ。この制度を使い、青年海外協力隊でアフリカに行って事業をしている女性がいるが、彼女が戻ってきて、その経験を生かしてくれたら、得難い戦力になると期待している。複業もできるようにした。
 ワークスタイルを変革するには、風土を変えることが最も重要だ。そのため仕事一筋だった私が率先垂範で育児休暇を取得。育児の大変さと大切さを経験したことで、育児は未来の市場をつくることであり、最大の社会貢献だと気づいた。
 個性の尊重は活力のある組織づくりにつながる。そして多様性こそがイノベーションを生み出しやすい環境をつくると考える。

起業報告「私が社長になった理由」

平成25年度修了生 須藤 定 氏

須藤定

 社会人になってから、映像制作・映画製作・CG制作などの、動画コンテンツの制作を生業としていました。プロになってから10年くらい経った時に、縁があったようで、専門学校と大学での講師の話をいただき、既に20年もの間、プロの制作者と、講師の二足の草鞋を履いています。
 今でも講師として学生達に教えてはいますが、私が学生達に教えていることは、プロの現場で培ったものでした。振り返ってみれば、私自身がコンテンツやデザインをちゃんと教わったことがなく、我流で叩上げた知識しかなかったのです。それを思い48歳で産業技術大学院大学に入学しました。
 産業技術大学院大学では様々な職種の学生や先生達が居て、授業内容に加え、その人達と話すのが楽しくて刺激にもなりました。その学生の中には既に起業されていて、社長の方も何人か居ました。それらの学友達と一緒に過ごしていく中において、授業にはデザイン系のみならずマネジメント系もあり、教授や社長である学友達からも背中を押していただき、起業する決意がつきました。

平成26年度入学生 堀 貴史 氏

堀貴史

 私は在学中に人財開発ソリューションを提供するリープ株式会社を設立しました。
 具体的には企業が事業目標を達成するための人財開発を支援するために

  • 1. HPI(Human Performance Improvement)に基づくコンピテンシー、パフォーマンスのアセスメントサービス、
  • 2. アセスメント結果のデータ解析と行動観察による課題抽出、
  • 3. 抽出した課題を解決するための研修設計

の3つをサービスの軸としています。
 教育担当者の教えたい事を一方的に教える研修ではなく、データによる科学的根拠や人間中心設計による学習者視点を取りいれ、効果的・効率的・魅力的な戦略的人財開発を提供する支援をしたいと考えています。
 産業技術大学院大学では、「ものづくり・ことづくり」におけるサイエンス・エンジニアリング・デザインの手法や視点を学び、新しいサービスの開発や設計に活かす事ができました。また、ともに学ぶ仲間、ビジネスでコラボレーションできるパートナー、ご指導いただいた先生方と出会い、日々支えられています。
 創立10周年という記念すべき節目の年に、私も飛躍できればと思っております。

IT 業界を牽引する経営者や著名小説家が産業界、さらにはAIIT の未来を語る!

挨拶

公立大学法人首都大学東京 理事長 川淵 三郎 氏

川淵三郎

 この大学院大学は、働く人などがスキルアップを目指し、高度な専門技術を身につけることができる大学です。実際に大学に行くと、学生が真摯に授業に向かう姿勢に感銘を受けます。
 話は変わりますが、私は今、バスケットボールの改革に取り組んでいます。ご存じのとおり2つのリーグ統一の問題を、狭い世界、低いレベルで考えた結果、10年もたってしまった。そしてリーグ統一などの問題を解決しなければ国際試合へ出場できないという制裁を科せられたわけです。こうした問題を解決するために本来は何をすべきか、それには大きなビジョンを持って、そこに至る道を考えるべきなんです。たとえ常識に反するとしても180度発想を変えるというコペルニクス的転回により解決する必要があったわけです。
 この大学では、徹底的に討論し課題解決策を見いだすPBLという授業があり、アジア各国とも連携しながら多くのことに取り組んでいます。こうした活動を通じ、明確な目標を掲げ、前例にとらわれずに発想し解決できる人材を今後も育成していきます。

記念講演

「次世代情報技術がもたらす新たな社会とリーダーシップ」
産業技術大学院大学運営諮問会議 委員長 日本アイ・ビー・エム 副会長 橋本 孝之 氏

橋本孝之

 IBMコーポレーションは1911年の創立から104年。創立当初のビジネスは、秤(はかり)、タイムレコーダー、統計機だったが、イノベーションによりその後、絶え間なくビジネスモデルを変えてきた。20年前はビジネスのほとんどがハードウエアだったが、直近ではハードウエアの比率は全ビジネスの1桁で、サービスとソフトウエアがほとんどだ。
 イノベーションの原動力には、ダイバーシティー(多様性)への積極的な取り組みがある。マインドセットを変えていくこと、すなわち、多様性を頭で理解し、心理的な壁を排除し、多様性のある人たちと一緒に新しい価値を創ることが必要だ。また、新しい情報技術を積極的に活用することもイノベーションにつながる。今後は、コグニティブ・コンピューティングと呼ぶ、これまでにない規模で学び、目的を持って推論し、人と自然に関わり合うシステムが社会を大きく変えていく。現在は社会が変わる変曲点にあり、今後10~20年の変化率は相当大きなものがあることを肝に銘じておくべきである。
 そのような時代においてグローバルなビジネスを展開していくには、複数のスキルを身につけるために学び続けることが重要であると同時に、コンピテンシー(行動特性)を磨いていく必要がある。IBMでは、エグゼクティブが身につけるべきコンピテンシーとして、「あくなきチャレンジ精神」「お客様の成功を支えるための協力」「グローバルな連携」「体系的な思考に基づく行動」「相互信頼の構築」「専門能力を駆使した影響力」「絶え間ない変革」「相手にインパクトを与えるコミュニケーション」「他の社員の成功を支援」の9つを掲げている。

鼎談

首都東京の専門職大学院としての役割 〜未来を切り開くスーパープロフェッショナルの育成〜

(左から) 石島 辰太郎 氏、日本アイ・ビー・エム シニア・アーキテクト 早川 ゆき 氏、小説家 真山 仁 氏

  • 真山仁真山氏
  • 早川ゆき早川氏

石島 … プロフェッショナルを超える人材という意味でスーパープロフェッショナルという言葉を使っている。

真山 … 一生懸命やるのは当然で結果を出して初めてプロの入り口に着く。そこにスーパーがつくということは、想像もしなかった結果を出せる人のことだろう。誰か一人が泥をかぶることで進んでいくことがある。トップリーダーはこちらのタイプではないか。

石島 … すべての人材をトップリーダーとして育成することは難しい。

真山 … トップリーダーになるには経験と環境が必要だ。教育する側に目利きが必要だろう。一人ひとりのよい面を訓練で伸ばしていくことが大事だ。

早川 … PBLも訓練の場だろう。東日本大震災の際、交流サイトの若い社員が自分の判断で日本向けにサーバーを増強したというエピソードがある。

真山 … 企業のカルチャーが重要な好例。IBMのカルチャーはどういうものか。

早川 … 会社のカルチャーもあるが、組織の枠を超えたチームとしてのカルチャーが大切。チームワークが良ければ個人の能力以上の力が出てつらくてもみんなで頑張れる。

石島 … カルチャーの部分をハンドリングするための感性を磨くところが大学ではないか。

真山 … 長所を伸ばし結果も重視する海外の大学は強い。

早川 … 社員もいろいろな局面で働き方が変わることがあるが、変化する多様な価値観を受け入れて支援する企業文化がある。それは昔から変わらない。女性も男性も同じ。それでよいのではないか。

石島 … 男性は肩に力を入れすぎているのかもしれない。教育機関が果たせる役割には限界があるが、未知のことに挑戦し、自分の信念を磨き上げる場を提供することが求められている。

動画

AIITの軌跡と成果